天麩羅の油ぎとぎと熱帯夜（あ）

　このところ、毎日パソコンへ向かうのが日課になっている。
　パソコンに向かって何をしているかというと、Evernoteでブログを書いて、それを携帯アプリ「はてな」にコピペして、写真を添えてアップしている。
　それには半日かかる。仕事をリタイアし、読む人が楽しめるようにと文章を練るようになってから、アップするまでに倍時間がかかるようになった。
　でも、その時間が唯一私が私でいられる時間でもあり、そういう時間を過ごせることでとても心が安らいでいる。
　例えば、一つの表現を巡って、あーでもないこーでもないと考えるのが何より楽しい。画面の向こうでくふふと笑っている読者さんの顔が見えたりすると、もっと笑わしてやろうと思っちゃう。
　ブログを書き始めたのが2013年4月だから、書き始めてから今年でちょうど10年目になる。
　10年というと物事に一区切りついた気がするが、それは錯覚というもので、区切りなんか一つもついちゃいません。ただダラダラと生きているだけです。ダラダラ生きているから区切りがつかないのか、区切りをつけようとしないからダラダラ生きているのかは判らないけれど、青息吐息ながら生きていることは生きています。
　私にとっては9年も10年も11年もほとんど同じ歳月の移ろいで、困ったことに十進法で物事を捉える感覚がまるでない。
　ブログを毎日書いているのは、書かないではいられない何かが心に燻っているから。
　書いた内容がつまらなかったり面白かったりするのは、もちろん読者さんが勝手に決めていいことです。ただ私は、私が書いたものを面白がって読んでくれる読者さんが画面の向こうに見え隠れするから、そういう人をもっと面白がらせたくて書いたり手直しを加えたりするところがあります。それが自己満足にすぎないことは判っています。でも考えてみれば、人生すべてこれ自己満足の塊ですもんね。

【きょうの一枚】カミさんが作り置きしていった天麩羅。

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　作ってもらって言うのも何だが、カボチャとしめじの天麩羅はいいとして、海老がね、ちょっと古かったんじゃないかな。あれだけ海老好きのお兄ちゃんが海老に箸をつけなかったものね。私は晩酌のつまみに一皿ペロリと平らげたけど。

【書】「厚載」こうさい（No.1,138）

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　「大地のこと。あらゆるものを載せることから。」（『旺文社漢字典』第2版）
　「厚」は、厂(がけ)と、音を表す㫗(こう。享の変化した形。大きい意→洪)とで、土があつく重なったがけの意、ひいて「あつい」意を表す。
　「載」は、車と、音を表す𢦏(さい。とどめおく意→在)とで、車の上に物を「のせる」意を表す。

【ディジタル画】『坑夫』 20（No.578）

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　駅を降りると、宿のメインロードが真っ直ぐに伸びていて、その道に沿って瓦葺だの藁葺だのの家が左右に並ぶ。
　「遠くへ行けば行く程次第々々に屋根が低くなつて、何百軒とある家が、一本の針金で勾配を纏められる為に向ふのはづれから進めば進む程、地面に近寄つてくる」
　これは、駅前通りの家並の様子を、絵画遠近法の描写法を使って文章に仕立てたものだが、決して成功しているとはいえない。
　文章でくだくだ説明するより、一枚の絵を見るだけで遠近法とはどういうものかがたちまち判る。まさに「百聞は一見にしかず」です。
　それはいいとして、並んでいる家の中に「腰障子の大きな蛤がかいてあつたりして」という件があって、そこで「腰障子」ってなんだ？　という疑問が湧いた。次に、その腰障子なるものに描かれた「大きな蛤」が気になって、今度はその蛤を描きたくなった。それで、Conceptsで描いてみた。「その手は桑名の焼き蛤」。
　蛤料理といえば、なんといっても焼き蛤。それしか考えられません。
　縦に寸断されたドラム缶に金網を渡らせ、下から炭火で焼く。浜から揚がったばかりの蛤を金網にひょいと乗っけるってえと、潮の香りがぷんと立つ。海水がちょうどいい塩加減だ。
　で、やがて、熱さに堪えきれなくなった蛤がぱかんと口を開く。そこへ醤油を垂らす。その醤油が殻から漏れて下の炭をじゅっと焦がす。あの醤油の焦げる匂いがたまらない。やべやべ、今にもよだれが出そうになってきた。酒、酒、酒持って来い！
　台所がオール電化で占められた日にゃ、こういう美味に舌鼓を打つなんてことはないんだろうな。やっぱり潮の香りが鼻をつくようじゃないといけない。築地のタワマンから都会の夜景を見下ろしながら食す焼蛤なんて、あんなの蛤じゃない。潮の香りがしないもの。だったら、アサリの佃煮の方がまだまし。　