寒月の満るまであと二日ほど（あ）

　最近、物忘れが激しくなったなあと思う。ボケが始まったんだろうか。
　納豆を捏ねようと思って冷蔵庫から容器を出したら、入っているはずの辛子の小袋が入っていない。なくても食えなくはないと思ってそのまま食ったが、食った後でテーブル下の椅子に落ちているのを見つけた。隈なく品質チェックを行う業者が入れ忘れることなんてあり得ないと思っていたら、何のことはない私が辛子の小袋を見つけられなかっただけだった。
　もう一つは、パソコンに挿入するUSBのありかを忘れてしまったこと。
　USBは、家のパソコンで作った文書を保存し、それを公民館事務室まで運んでそこのパソコンで開いて印刷するのに使っている。
　ひと頃は教員が帰宅途中に車上荒らしに遭ってUSBを紛失するという事件が相次いだ。生徒個人情報満載のUSBが盗まれたことが大きな社会問題となり、教員は責任を取る形で次々に辞めていった。以来、学校ではUSBやノートPCへの扱いがより厳しくなり、事務処理が俄然煩雑になった。
　そんな経緯を知っているから、USBのありかを失念したときは青ざめた。公民館事務室と拙宅を二往復した。が、ない。落ち着け落ち着け。通った道に落ちていないかと思ってそこも二往復したが、ない、ない。再度自分が足を運んだルートを思い返して行き来したが、ないものはない。思いつくところを全て見ても出てこなかった。
　一体どこへ行ってしまったんだろう。弱った、弱った、弱った。ここは始末書を書いて役職を辞するしかないか。でも、人の手に渡って悪用されでもしたら大変だ。そこまで考えて、もう一度家内を捜索した。
　あった。ベッド部屋入り口のカーテンの穴に引っかかっていた。そのときの安堵といったらない。よかったよかった。これで首の皮一枚繋がった。しかし、そこにあるとは思いもよらなかった。なんでUSBが穴に引っ掛かっていたんだろう。
　何んてこったの物忘れ事件はまだまだある。が長くなるのできょうはこのへんにしておこう。

　最近こんなことばっか。

【今日の一枚】満月二日前の月。

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　きのう(12/6)、病院で定期検診をした。血圧も血糖値も体重も、すべて良。ただ、HbA1c値が前月より一気に2ポイントも下がったのが心配。主治医も不思議がっていた。
　値が急激下降した原因が主治医にも判らないらしい。薬は前回と同じやつを普通に飲んでるし、思い当たる節がまったくない。
　とりあえずは、今の生活を保っていればいいんだな。そういうことにしておこう。
　病院の玄関を出たら、東の空にポッカリ月が浮かんでた。あまりにまん丸いから満月だと思ったら違った。家に帰って月齢を確認したら、満月より二日ばかり早かった。
　二十四節気でいうと、きょうから「大雪」。本格的な冬の訪れだ。青森の空はどうだろう、雪が舞っているだろうか。

【書】「域中」イキチュウ（No.1,268）

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　「①区域のなか。②天下。国中。<老子>」（『旺文社漢字典』第2版）
　「域」は、或(ワク・イキ。さかいの意)に土を加えて、土地の「さかい」の意に用いる。
　「中」は、もののまん中をたて棒で貫いたさまで、「なか」の意を表す。転じて「あたる」意に用いる。

【ディジタル画】『それから』十の四（No.708）

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　三千代は代助を訪ねる。三千代は息を喘(はず)ましている。手に大きな白い百合の花を提げている。
　三千代は「あんまり奇麗だつたから」と言って、代助が漬けた鈴蘭の鉢の水を洋盃(コップ)に注いで飲む。えっ、飲んだの？
　「（代助は三千代が）果して詩の為に鉢の水を呑んだのか、又は生理上の作用に促されて飲んだのか、追窮する勇気も出なかつた」とあるが、三千代が鉢の水を飲んだのは前者に決まってる。代助は知っててあえて追窮しなかっただけ。そんなの追窮したって仕方なかんべさ。