いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

花咲けどやつと七年山法師(あ)

 上のデッキでタイムラプス撮影のセッティングをしていると、南隣の奥さんから声がかかった。「なにをされてるんですか?」。

 タイムラプスという単語で説明しても詮ないと思い、「ええ、雲の動きをちょっと……」と言葉を濁した。それで納得したかどうか判らないけど、庭を駆け回っていたワンちゃんと一緒に家に引っ込んだ。

 今どき雲の動きを追っかけて何になるの? と理解に苦しんだかもしれないが、害のない趣味と捉えられたようでこれといった咎め立ては特になかった。

 何になるの? か。そう言われてもなあ。「何にもならない」と答えるしかないよなあ。実際、何にもならないんだから。でも、趣味ってそんなもんでしょ? 人様に害を与えない程度に好き勝手なことをしてればいいのさ。

 

【きょうの一枚】ヤマボウシ(山法師)の花。

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 庭のヤマボウシ。私がカイヅカイブキの後ろに植えた。

 花じゃなく秋の結実を当て込んで植えたのだったが、植えて7年経つのにまだ実を見たことがない。花はこんなにいっぱい咲きすぎるくらい咲くのに。

 ここはその昔、孫どもの秘密基地だった。雨に濡れないように屋根をこしらえるというので、細い幹に釘を打ち付けたのを覚えている。その釘はそのままにしてあるから、今も幹のどこかに打ち付けられて残っているはずだ。

 そんな孫どもも、上が高2で下が中3。みんな大きくなった。

 覚えているだろうか。ヤマボウシの下に秘密基地があったことを。

 

【書】「愛日」アイジツ(No.1,433)

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「①愛すべき日の光。冬の日をいう。「冬日可愛トウジツはアイすべし」<左伝・文七・注>②時を惜しむ。「孝子愛日コウシはひをおしむ」<法言・孝至>(『旺文社漢字典第2版』)

「愛」は、心と、音を表す旡(キ。アイは変化した音。つまる意→吃)とで、胸にみちる愛情の意。借りて「めでる」意に用いる。

「日」は、常に円くかがやいている太陽の形にかたどる。↔︎月

 

【ディジタル画】『彼岸過迄』風呂の後 五(No.873)

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 敬太郎は「毎日電車の中で乗り合せる普通の女だの、または散歩の道すがら行き逢ふ実際の男だのを見てさへ、悉く尋常以上に奇なあるものを、マントの裏かコートの袖に忍ばして居はしないだらうかと考える」タイプのようです。想像力豊かすぎ。

 「此傾向は、彼がまだ高等学校に居た時分、英語の教師が教科書としてスチーヴンソンの新阿剌比亜(アラビア)物語といふ書物を読ました頃から段々頭を持ち上げ出したやうに思はれる」だって。生まれつきそういう方面に興味を持つような人だったんだな。

 てか、あれっ? この人の肖像画、一度どこかで描いた覚えがあるぞ。どこだっけ……。そうだ、確か『吾輩は猫である』に出てきたんじゃなかったかな。

 

【昭和の風景】154

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 私には妹がいた。小学校に入る前に交通事故で死んだ。即死だった。

 野良に出ていた母は狂乱して病院に走ったが、私は病室に入ることを許されず、母の慟哭を外で聞いた。

 娘を亡くして以来、母は墓参りの度に寺に安置された位牌に線香を手向けた。位牌の脇にはガラスケースに入った白い顔の人形があった。母はその人形に手を合わせ、何も語らない人形にずっと何かを語りかけていた。

 その人形の顔を私は60年経った今も忘れない。飛び散った赤い血の後ろに漆黒の闇があって、その暗闇から妹の白い顔が浮かび上がるのだ。

 

【タイムラプス】5/21(日)4:35〜6:21の伊豆長岡の空。26秒。

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