いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

湯屋帰りぬしも火照るや夕紅葉(あ)

昨日の道徳の時間に、NHK「オンマイウェイ」を見た。
この番組は道徳教育用にNHKが編んだもので、いろんな困難に立ち向かう人たちの取り組みを紹介する10分のドキュメンタリー番組だ。
昨日見たのは、大阪市のあるホスピスが舞台で、余命いくばくもない末期癌の患者さんが「リクエスト食」を食べるシーンだった。その患者さんがリクエストしたのは「えびフライ」。聞けば、先立ったご主人とデートしたときに食べた思い出のメニューだと言う。
使い慣れないナイフとフォークを手に、えいっとばかりにナイフを当てたそのとき、「えびを前へポーンと飛ばしちゃった。恥ずかしかった……」と懐かしそうに思い出を語る患者さんの顔はとても幸せそうだった。
迫る死の恐怖と向き合いながら、どんな思いで毎日を過ごしているのだろう。私だったら、最期の食事に何を食うだろう。私にとって思い出のいっぱい詰まった食事って何だろう。テレビの映像を見ながら、そんなこんなを思っていた。
子どもの頃、貧しかった我が家のご馳走といえばライスカレーだった。肉は鯨肉。その頃は市販のカレールーなどなかったから、小麦粉にカレー粉を混ぜ薪ストーブの上でグツグツ煮込んだ。
次に思い出すのは、アキアジだろうか。鮭のことを田舎ではそう呼んでいた。父は当時、雇われ船頭として北海道の知床に出稼ぎに出ていた。そして雪が降り始める頃に家に戻って来る。戻って来るときの土産は決まってアキアジだった。冬場はそれが毎朝昼晩の食卓に盛られる。肉厚で市場に出回る鮭とはモノが違うことは子どもの目にも判った。
父は自分の獲ったアキアジが自慢のようだった。無口で言葉少ない父だったが、口に出さなくても顔を見れば判る。しかし、食っても食っても出てくるアキアジに私は閉口してもいた。もっと違うものを食いたいとは思ったが、そんなことを父の前で言えるはずもなかった。
私が今際の際に食いたいと思う食事があるとしたら、それは何だろう。鯨肉ライスカレーか肉厚アキアジか。はたまたカミさんと初めて食った焼き鳥屋のタン塩か。カミさん手製の卵焼きか……。

それはそのときになってみないとなんとも判りませんね。


【写真】庭の枝垂れ紅葉(手向山)。

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庭の紅葉も赤々と色づいている。こっちはイロハモミジではなくシダレモミジ。手向山ともいう。菅原道眞「このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」(今度の旅は急なことで、道祖神に手向ける幣(ぬさ)も用意できませなんだ。代わりに手向山の紅葉を捧げますれば、神よ御心のままにお受け取りくだされ)の「手向山」ですね。
こんなに真っ赤だったっけ。今年のがやけにきれいに感じるのは気のせいか。
下はドウダンツツジ。こっちもだいぶ色づいてきました。


【温泉】一二三荘。


【タイムラプス】11月29日(木)5:45〜7:33の伊豆長岡の空。27秒。

→FBからうまくリンクが貼れないよぉ。