いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

ピザ焼けるこつ伝授して卒業す(あ)

 今号の文芸誌は来月号と併せた「直木賞発表」号。

 昨日は京極夏彦さんと浅田次郎さんの選評を紹介したが、今日はその他の選評の紹介。

 引き続き河崎秋子著の『ともぐい』。

桐野夏生……主人公「熊爪」は山に棲み、熊や鹿を撃って町に毛皮や肉を売りに行く。僅かの金を手にして、銃弾やコメを買う。しかし、ヒトの姿はしているものの、心はほとんど熊に近い。熊が熊を殺すのだから、「ともぐい」である。狩猟の役に立つ犬にも名前など付けないし、獲物の切れ端くらいしか与えない。獣を殺して、ただ一人で生きる。怪我をきっかけにヒトとして生きてみようかと思うが、うまくいかずに女に殺される。生まれて生きて死ぬ。ヒトも熊も自然界の一部でしかないというシンプルさ。

 作者は北海道の厳しい自然を活写し、「熊爪」という熊に近いヒトを巧妙に造型した。前人未踏の山に分け入るような仕事である。オビに「熊文学」とあるが、まさにそうかもしれない。

高村薫……『ともぐい』は、もとより主人公を人間と捉えていては読み通せない小説のため、人間が描けているか否かを問うても意味がない。北海道の自然と一体化した人間は動物のように考え、行動し、生きて死ぬ。女もまた人間をやめ、動物のように自由になり、孕み、殺し、生きる。その筆致に圧倒される反面、評者はこの作者の持ち味の、退廃的な無軌道ぶりがちょっと不得手ではある。

林真理子……河崎秋子さんの「ともぐい」には圧倒され、まずこの作品をと強く推した。私はもともと「狩猟文学」が苦手である。獲物の皮を剥ぐような描写などは、出来るならご免被りたいと思う。ところがどうだろう、「ともぐい」のすさまじい迫力ある描写は、私のやわな好みをふっとばすものであった。厳寒の大地に、一人で生きてきた男、どんな猛獣にも勝ち抜いてきた男が、女にやすやすと殺されてしまう。この寓話的解釈をめぐって、選考委員の間でさまざまな意見が交わされた。

 私は最初この女に強い違和感を持った。日露戦争前の北のさいはてで、陽子(はるこ)という名を持ち、桃色のスカートをはく女など存在するだろうか。彼女は異空間から紛れた”近代”で、男はそれゆえに殺害されたのだと私は解釈した。が、他の選考委員から、男こそ熊そのもので、女は自分の子を守る牝熊なのだと聞いてなるほどと思った。すばらしい文学作品がそうであるように、「ともぐい」はさまざまな読み方が出来るのである。

 紙面が尽きた。以下省略。

 

【きょうの一枚】冷凍ピザのトッピング。

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 ダッチオーブンで冷凍ピザを焼こうと思って、ベーコンを切ってピザの上に敷いた。さらにその上に「ふりかけるチーズ」を載せた。

 で、それをアルミホイルにくるみ、ダッチオーブンまで持って行こうとした手前で周辺にばら撒いてしまった。

 床に敷いたコルクタイルの繋ぎ目に足を取られてつんのめってしまったのだった。せっかくトッピングしたのがこぼれると思ったらその通りスローモーションでこぼれた。こぼれ落ちたところがガンガンに熱されたダッチオーブンだったために、トッピングがじゅっと音を立てて焦げ、家中が煙だらけ。ダッチオーブンの中には溶岩プレートのカケラが敷き詰められていたのでした。

 こぼれ落ちたトッピングを掬おうにも掬えない。掬うには溶岩プレートのカケラを取り除かないといけない。で、なすすべなく焦げるのを待つしかなかった。

 家中にもうもうと煙が立ち込め、窓という窓を全開にして換気する。寒かった。でも、そんなこと言っていられない煙い煙い。

 焼いたピザをつまんで文芸誌に目を通そうとしたのに、なんてこった。

 仕方なく冷蔵庫から賞味期限の過ぎた絹豆腐を取り出し、それを湯豆腐にして晩酌の一皿にした。寒いしピザは食えないし、全くとほほの晩酌になってしまいました。

 

【書】「覲」キン・まみえる(No.1,693)

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 見と、音を表す〓(キン。覲から「見」のパーツを取り除いた形。つつしむ意→謹)とから成る。(『旺文社漢字典第二版』ディジタル版) 

 「参覲交代」は江戸時代にあった制度の一つで、普通は「参勤交代」と書くが、正しくは「参覲交代」と、「勤」を「覲」と書く。

 

【ディジタル画】『坊つちやん』その52(No.1,133)

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 英語のうらなり先生は、赤シャツの策略で日向の延岡に転勤するが、その時牧水が旧制延岡中学の生徒だったかどうかは判らない。

 牧水は延岡に8年間いて、最後は沼津・千本松原近くの自宅で亡くなった。享年43。旅と酒をこよなく愛した歌人だった。

 「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」。これは、名高い、牧水の代表作である。

 

【昭和の風景】『東海道中膝栗毛』(No.412)

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 明治の錦絵。

 江戸時代の浮世絵と比べて、どうも風貌が明治そのものですね。

 

【タイムラプス】令和6年2月25日(日)6:54〜9:45の韮山方面の雨空。21秒。

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