今日は合唱コンクール。朝から校舎内のそちこちで歌声が絶えなかった。
私は保護者の受付を仰せつかり、会場で合唱を聴くことができたのは、2年の3クラスだけだった。それは受付を担当した他の先生が、見に行っていいよと言ってくれたからで、言ってくれなかったらずっと受付の椅子に座ったままだった。
私は、2年生の合唱もさることながら、それ以上に聴きたかったのは、3年の部の最初に歌うクラスの合唱だった。「言葉にすれば」という合唱曲を子どもたちと一緒に練習してきて、ひと一倍思い入れが強かった。そのクラスの最後の合唱を会場で聴くことができなかったことが、返す返すも残念である。
3年の部は昼食を挟んで午後に行われる。どのクラスも金賞を目指して、昼休みのスクエア(中庭)は、本番を前にしての鍔(つば)迫り合いの様相を呈する。毎年、そう。ある意味、それが伝統になっていて、4クラスが互いに向き合う格好で最後の調整をするのである。いわば、自分たちの力を誇示する野生動物と化すように。
私は毎年それを楽しみにしている。今年も十分に堪能することができた。それで、時計を確認しなかったものだから午後の受付に出遅れてしまった。慌てて受付に行ったら、すでにたくさんの保護者の方が自主的に受付名簿に○をつけてくれていた。大失態である。保護者の方には大変失礼なことをしてしまいました。申し訳ございません。
そういうこともあって、私がいちばん聴きたかったクラスの合唱を聴くことはできなかった。「聴きに行っていいですか？」とはとても言えなかった。
私は、昨日までの歌声の出来栄えからして、このクラスが金賞だろうと思っていた。が、結果発表は違った。別のクラスが金賞を獲り、聴きたかったクラスは金賞に届かなかった。後で聞いた話によると、そのクラスは帰りの会で悔し涙に暮れたという。
泣くがいい。うんと泣くがいい。私は君たちがこれまで培ってきた努力を知っている。最初はどうなることかと心配していた歌声を、ここまで作ってきた諦めない心を知っている。その経験は、いつか必ず君たちの力になる。最後の歌声を直に聴くことはできなかったけれど、私は心から君たちにエールを送る。よくがんばりました。そして、感動をありがとうございました。
【今日の一枚】巨大なイガグリ(毬栗)。
一二三荘の衝立看板の前に置かれている巨大な毬栗。指を差し出して、その巨大さを写真に収めてもよかったが、そこまでしなくても巨大さは伝わるだろう。と思ったけれど、撮った写真を改めて見たら、巨大さはさほど伝わらない。大きさは、そうですね、中央のいちばんでかいやつがソフトボール大と言えば、大体の大きさは伝わるだろうか。
写真を撮っていたら厨房から女将さんが出てきた。「あまりに見事な栗なので、写真を撮らせてもらいました。どこの栗ですか？」と訊くと、下畑の実家で採れた栗だと言う。下畑(しもはた)というのは、一二三荘のある旧下田街道から、日本競輪学校のある亀石峠方面へ行く途中にある地区をいう。中学校の校歌に歌われる♪ああ美しい山と水♪の「水」を汲み出すポンプがあるところ。そこでは、こんな巨大な栗が採れるですね。女将さんの実家にはこの手の栗の木が3本あるとおっしゃっていた。
数日前までは青々とした毬栗だったが、今日見たら、割れ目からまるまる肥えた栗の実が顔を出していた。女将さんはさらに私に見せようと毬栗を摘んで割れ目を広げようとしたが、指に刺さるトゲに参って剥くのを断念した。
そんなことまでしてくれる女将さんだから、地元の人からも泊まり客からも親しまれている。たまに帳簿をつけながらジュリー(沢田研二)の歌をカセットデッキで流していたりもして、いかにも気さくな飾り気のない人柄の女将さんである。
【書】「曲芸(藝)」きょくげい（No.470）
「①ちょっとした技芸。小技。②[国]手足の芸当。離れわざ。かるわざ」（『旺文社漢字典』第2版）
「曲」は、木や竹で作ったまげもの細工の形。「芸(藝)」は、若木を人が手に持つ形。芸(藝)について、日本画家の千住博さんは、「芸術というのは人間の人間に対する問いかけ、伝達不可能と思える内容のコミュニケーションなのだ」と言っている。
芸術の秋です。その昔、暗い洞窟の中で松明(たいまつ)を灯しながら壁に絵を残した人は、どんな思いで絵を描いていたのだろう。そのことに思いを馳せ、自分なりに「藝とは何か」(「芸」ではない。「芸」には、若木を植えて育てる意味を示すパーツが抜け落ちている)を改めて考えてみたいと思います。
【タイムラプス】10月2日（金）5:02〜7:01の伊豆長岡の空。29秒。
https://twitter.com/aisakajiro/status/1312207167160631296?s=21
