私はいつ本を読むか。晩酌をしながら読む。それも『オール讀物』といった娯楽文芸誌。
読んで楽しけりゃそれでいいという発想。これはテレビのバラエティ番組を見て面白がる発想に似ている。
私は晩酌の時にテレビを点けない。点けないで文芸誌を繙く。
が、カミさんがいるときは、カミさんは必ずといっていいほどテレビを点ける。それが習い性になっている。
大相撲の場所があるときなんかは、この取り組みを見逃してなるものかの気構えでテレビにへばりつくから鬼気迫る。
天気予報も欠かさず見る。それで明日の天気を知って私にレクチャーする。「明日は南から高気圧が北上して、日本列島を覆う」云々。高気圧が南から北上するなんてカミさんが予測するわけがない。気象衛星のデータが源だ。が、これみんなテレビの気象予報士の受け売り。それを自分が予測したかのようにいう。そして、大概テレビの言うことは当たる。だからみんなテレビの言うことを真に受ける。それを科学の発達というかどうかは知らん。
テレビでは「暑くなるから、特にお年寄りはこまめに水分を取ったりクーラーをつけるなどするように」と利いたふうなことを言う。お年寄りを労っているようだが、余計なお世話。お年寄りは、暑けりゃ勝手に涼を求めて避難する。
私の家にクーラーはない。これは、クーラーを買える余裕があるならいいが、なけりゃ我慢しろと言っているに等しい。それが所得差別だとようやく気付いたか、テレビでもクーラーの四文字をあまり言わなくなった。
本当は、つべこべ言わず早く死ねと言いたいが、そう言うとテレビ局に苦情が殺到するから言わない。「もの言えば唇寒し……」を決め込んでいるようだ。
話がそれた。戻そう。
まだ未来を感じていた若い頃は身の程も弁えずに難しい本を手にした。で、そういう難しい本は大抵町の本屋に置いてない。置いても売れないから置かない。
どうしても読みたければ注文して取り寄せる。でも、そういう本に限って読まない。本棚に立てたまま大切にしまっておくことが多い。今思えば、あれは自分のためではなく訪ねてくる客に見栄を張るために置いてあるようなもので、私はこんな難しい本を読んでいますと自慢したかったのだと思う。
そんなの汚い食卓に引っ張り出してくるわけがない。場末の週刊誌じゃないんだから。
いい年こいて先が見えない状態になっても本を読んだりする。なぜだろう。きっと読むのが楽しいんだ。楽しいから続けられるんだ。
私はテレビを見るより文芸誌を追っかけてるのが楽しいからそうしているだけなんだ。
こりゃ、カミさんと一緒にいたら喧嘩になるな。テレビより本が好きだなんて言わないでおこう。桑原くわばら。
【きょうの一枚】手作り和菓子。
先日の「うちわ作り」サロンのお茶請け。サロン重鎮の作。今回は「栗羊羹」と「薄皮饅頭」。相変わらず旨い。
【書】源重之みなもとのしげゆき(No.1,809)
「風をいたみ岩うつなみのおのれのみ砕けてものを思ふころかな」(意：風がはげしくて、岩に打ち当たる波が（岩はびくともしないのに）自分だけが砕け散るように、(相手は平気なのに)私だけが心も砕けんばかりに思い悩んでいるこの頃だなあ)
源重之は、清和天皇の曾孫で三十六歌仙の一人。天皇の東宮時代に帯刀先生(たてはきのせんじょう)、即位後は右近将監から相模権守(さがみのごんのかみ)に出世した。
あたかも岩にぶち当たって砕け散る波のように、荒々しく岩打つ波は、振り向いてもくれない彼女に思いを寄せる私の心のようだなあ。絵に描いたような鮮烈な恋の歌。
【ディジタル画】『カーライル博物館』その15(No.1,309)
「人生の目的は行為にして思想にあらず」。
トーマス・カーライルの箴言。
頭であれこれ悩んだって、何の足しにもならない。行動あるのみ。
そうは言ってもねえ、行動は思想が実際の行動として現れるものだと思うんだけどなあ。行動の源は思想だよ。どんなふうに考えるかで行動が定まると思うんだけど。
【昭和の風景】墨画(No.529)
絵手紙。「燃える心は 忘れちゃいけない」。
いつまでも、燃える心だけは持っていたい。どんな年になっても情熱をなくしたらおしまいだ。常にカッカと燃えていないと輝くお年寄りにはなれない、ということか。だったら私は輝かなくていい。灰にまみれた汚い燃え滓でいいよ。
【タイムラプス】令和6年6月21日(金)6:28〜9:52の韮山方面の雨空。25秒。
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