いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

網張つて待つやひたすら冬の蜘蛛(あ)

 朝食にご飯と味噌汁と納豆と胡瓜の新香が出た。デザートに柿が出た。「出た」というのはカミさんが作って出したのである。それで私は、出勤の支度をするだけでよかった。

 こんな些細な朝の始まりが、なんとなく面映い。藤沢のマンションで暮らしていた頃は、当たり前のように感じていた日常の風景も、こうして別々に暮らしてみると新鮮に映る。

 息子二人は独立してそれぞれの生活を営んでいる。娘は小田原に嫁ぎ、二人の子どもを育てている。私も子育てが終わり、退職を機に伊豆で老後生活を送る腹づもりでいたが、カミさんは神奈川に残って70まで働くと鼻息荒い。まだしばらくは伊豆で暮らす気配がない。それをいいことに、私は存分に羽を伸ばしている。

 カミさんはもともと膝に古傷を持っていたが、今は駅の階段を上り下りするのも苦痛で、エレベーターを使っていると言う。その苦痛が年とともにじわじわ増してきているようで、もしかしたら70を待たずに伊豆へ来るやもしれぬ。

 が、伊豆のここはどこへ行くにも坂道がネックで、カミさんは歩くのもしんどかろう。高齢の方が車を手放さないのは坂道を上り下りするのが辛いからだ。カミさんはどうだろう。伊豆へ来たとしても車は当分手放さないだろうな。きっと80になっても車を乗る気だ。

 私一人の朝ごはんは、ホットサンドで済ます。毎日がホットサンドでも飽きない。それに慣れてしまった。精肉店で買ってきた徳用ハム2枚に、カメさんデーで買ってきたスライスチーズを挟み、コンロで8枚切食パンの裏表に焦げ目をつける。スープは、最近はインスタントの玉ねぎスープに青のりをスプーンですくって混ぜ、それを飲む。

 それが今日は、ご飯の朝食である。日常の朝食とは違って、老いた夫婦二人が久々に向き合う朝食は、どこかやっぱりこそばゆい。

 

【今日の一枚】女郎蜘蛛。

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 畑作業に出るときに教室のベランダで長靴に履き替える。ベランダの南側にアルミのドアがあって、そこから外へ出られるようになっている。そのドアのコンクリート壁に女郎蜘蛛が巣を張っていた。

 これは腹部に赤い模様があり、体長も4cmほどあるからメスの女郎蜘蛛でしょう。

 オスでもメスでも、私は昔から蜘蛛が苦手で、これを平気で手で捕獲し、手のひらでもてあそぶ人がいるというから信じられない。

 いたんだ。一昨年、クラスの子たちと一緒に山登りをした帰り道で女郎蜘蛛を素手で捕まえた子が。その子が、見せなくてもいいのに捕まえた蜘蛛を、最後列を歩く私のところにわざわざ戻って来て見せたんだ。いかにも自慢げに、尻込みする私にほれほれと。いやあ、あの時はまいったな。ぞぞっと鳥肌が立った。クワガタやカブトなら平気だけど、蜘蛛やゴキブリはいくつになっても苦手だ。

 

【書】「困殺」こんさい・こんさつ(No.507)

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 「困りはてる。困却。殺は、強意の助字。」(『旺文社漢字典』第2版)

 「困」は、囗(い)の形の枠の中に木をはめて、出入りを止める門限(門のしきみ。門の止め木)の形。門に止め木を設置して出入りを禁止することから、困は進退に「くるしむ、こまる」の意味となった。→白川静『常用字解』

 「殺」は、〓(たたり)をなす獣の形と殳(しゅ)とを組み合わせた形。殳は杖 (つえ)のように長い戈(ほこ)。〓をひきおこす獣を戈で殴(う)って殺す形。

〓↓

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【タイムラプス】11月9日(月)5:34〜7:01の伊豆長岡の空。21秒。

https://twitter.com/aisakajiro/status/1325928881883238401?s=21