いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

鳴釜の神事回廊蝉時雨(あ)

呑兵衛夏旅行三日目。

今日は最高気温が36℃にまで上がるとの天気予報に、呑兵衛一行はげんなり。それなりの覚悟をしてホテルを出るが、覚悟をしたって暑いものは暑い。どんだけ暑いんだよと思うにつけ、来年の今頃はオリンピック真っ最中なんだな、なんでこんな暑い中で世界一を競わなくてはいけないんだとは誰もが抱く疑心。

「こったらね暑んだば、けどさ出はえしな、かぐらんけ起ごへばまいね」(こんなに暑かったら、外へは出なさんな、日射病を起こしたらいけない)と、小さいときからこんこんと母に説き聞かされたものだが、この時期にオリンピックをやると母が聞いたら、オリンピック選手を兄に持つ母は、きっと「死んでまるべな」(死んでしまうでしょうに)と言うに違いない。

午前8時50分のフェリーで一行は岡山へ渡る。船上からは2連泊したホテルが見える(白い9階建のやつ)。空はすっかり晴れわたり、雲に多少の秋の気配を感じもするが、照りつける太陽は朝から容赦なく、30℃超の熱光線を放つ。

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船の客はソファを7割かた埋めていたが、デッキに出る人は一人もおらず、クーラーの効く涼しい船内で、大型液晶テレビに映る小泉進次郎と滝川クリステルの結婚記者会見の様子に見入っていた。と書くと、誰もが皆そうしていたふうに勘違いされるといけない。言い直そう。見入っていたのはほんの数人で、大半の人は、そんなのどうでもいいよというような反応だった。騒ぎ立てているのはマスコミだけで、一般庶民の関心事は、ともかくこの暑さをなんとかしてくれろの一点にある気がした。

フェリーを下り、一行は烏城へ向かう。烏城はもともと見学地から外れていた。計画にあったのは隣の後楽園散策だったが、これまた、あまりの暑さに、炎天の後楽園内を歩くよりも、天守閣内で涼んでいた方がまだましという判断で、急遽予定を変更することにした。

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なのに、駐車場探しにもたついて時間をロスしてしまった。最終日のロスは、帰りの新幹線が後に控えているだけに痛い。どこか目的地の一つを削らなければいけない。削るのは後楽園か、吉備津神社か、備中国分寺か、はたまた昼飯か。いや、昼飯は削れないでしょう。

ここは旅団長に委ねよう。と、判断を旅団長に委ねたら、旅団長曰く、「全部行く」。

旅団長は、偕楽園、兼六園は何度か行ったことがあるけれど、後楽園だけはまだ見たことがないという。ならば見るしかあるまい(生きているうちに見るのはこれが最後だろうから)と、入場券(シニア料金140円)を買って門をくぐる。ただし、あとが詰まっていることもあり、36℃の炎天ということもあり、案内図を見ながら決めた散策コースは最短のど真ん中を突っ切るコース。ゆったり写真を撮る暇もない。だけど、言っては何だが、後楽園は真夏に行くところじゃないね。それだけは判った。

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「鳴釜神事があるのは、吉備津神社だっけ? 吉備津彦神社だっけ?」と、旅団長が車にクーラーを入れながら言う。次の目的地をナビに入力するのに、どっちだっけと私に訊く。ええと、ええとと、私がiPhoneで検索している間に別の呑兵衛が吉備津神社ではないかと答える。「まあいいや、両方行ってみよう」と旅団長。なんだ、どっちみち両方行くんでないの。

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結局、吉備津彦神社→吉備津神社の順で回り、吉備津神社鳥居前の土産屋で昼食。全員ざるそば(600円)を注文したが、本格的な蕎麦屋さんじゃないから、味もまた推して知るべし。

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最後の見学地は備中国分寺五重塔。田園のど真ん中にあり、遠くからも塔は見えるが、近くまで行く道が判らない。リヤカー1台が通れるくらいの狭い道を車で強引に行ったら、途中で進入禁止となって山門に近づけない。そばに駐車場は裏にある旨の看板があり、そっちへ回ってみることにした。が、これまた畑仕事用の道みたいに狭く、それでも車を進めると、今度はいきなり広い道に出た。そこが駐車場だった。車が何台か駐車していて隅にバスも駐まっている。ちょうど寺の真裏に、バスが走るくらいの幅の道が新しくできたということだな。

そこから歩いて五重塔を見学し、見学したあとはひたすらレンタカーを返しに岡山駅を目指す。

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レンタカーを返し終えて岡山駅の改札を通ったのが午後3時5分。新幹線発車の15分前だった。ふう、ギリギリ間に合った。こんなギリギリのスリル満点の呑兵衛旅は初めて。来年はもっとゆったり行きたいな。

今回の呑兵衛旅で、毎食事時に飲むはずだった糖尿病の薬を家に忘れてしまったけれど、旅行中は特にこれといった体調の変化もなく、仲間に迷惑をかけなくて済んだことは何よりでした。薬がないからといって酒も食事もセーブすることなく、あたかも糖尿病でないかのように毎日を過ごし、楽しい旅ができたことに感謝します。