いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

夏の海の思い出

このところの猛暑続きで、熱中症に罹って病院に搬送される人が後を絶たない。今日も千葉県の高齢の女性が熱中症とみられる症状で亡くなった。

「外さ出へしな、霍乱気起こへばまいね」とは、炎天に身を晒す危険を戒める亡き母の口癖だった。霍乱とは日射病のことだが、昔から猛暑にはむやみに出歩かないということは生活習慣としてあった。だから、畑仕事は気温が上がる前の早朝に済ませ、昼は午睡で体力消耗を避けてきた。昼ごはんを食べた後の母は、決まって居間でごろごろしていた。母は私に忠告もし、自らも午睡を率先して行なっていた。
洟垂れ小僧のころは、そんな母親の忠告を黙って聞くわけがない。あり余るエネルギーを海へ山へたっぷり注いだものだ。夏の海は実に魅力に溢れていた。家の近くには飛び込み台を設けた監視員の見張る海水浴場はあったが、そういう安全地帯にはまず行かない。行くのは、もっぱら採石場下の海。そこには「アカジャラ」と呼ばれる貝が深さ5メートルほどの岩にへばりついている。それを素潜りで採るのである。正式名称は「アカザラガイ(赤皿貝)」という。貝殻の色が赤みを帯びていて、味はホタテ貝に似て美味。こいつを浜辺で焼いて食べる。たまにアワビにありつけたりもする。しかし、アワビは、歯ごたえがコリコリするばかりで、取り立てて旨いとは思わなかった。
一度、岩の隙間に潜んでいたアイナメを素手で捕まえたこともあった。当然のことながら魚は後ずさりできない。手をウサギに似たアイナメの顔に持っていってもアイナメは逃げられない。釣ろうと思ってもなかなか釣れないアイナメが、いとも簡単に手づかみできたことに逆に驚いてしまった。手づかみはしたものの、アイナメを両手に挟み持ったままでは泳げない。そこで、もがくアイナメを海水パンツの中に突っ込んだ。突っ込んだはいいが、パンツの中でもぞもぞ動いてどうにも気持ち悪い。で、20センチくらいの食べごろサイズだったけれどリリースした。
あの頃は、夏休みになると毎日のように海に行っていたなあ。海という天然のクーラーがあったればこそ、霍乱気を起こさずに済んだのかもしれない。子供時代を、溢れる自然に囲まれた環境で過ごせたことを幸せに思う。5,819歩。
写真は、習字をしている孫。神妙に書いていたのはものの数分で、下の孫娘も加わって筆を持ち始めたら、たちどころにお絵描きタイムになってしまった。おさな子の墨黒々と夏を書く(あ)
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