いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

一人夜に秋刀魚食らひてあはれと言ふ(あ)

【写真】今晩の晩酌。

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このところ、ほぼ連日、サンマです。いつもの魚屋では、サンマがこの前買ったよりもっと値下がりしていました。今年の秋刀魚は大漁だそうで。
今日は大きい方を2尾(1尾165円)買う。私の後から来たお客さんも大きいのを2尾買って、これで大きいサンマは完売。小さいのはまだだいぶ残っていました。少しでも大きい方が油がのってそうに見えるのかねえ。
サンマの皿に添えてあるのは庭の甘夏。小屋を作るのに邪魔で剪った枝にぶら下がっていたやつです。スダチ(酢橘)やユズ(柚子)と違って、香りはそれほど強くないが、上品な酸っぱさで味はまろやか。
切った残りの青い甘夏をがぶりとかじったら、これはさすがに酸っぱ味が口の中にジュワッと広がった。
サンマといえば、佐藤春夫の詩「秋刀魚の歌」である。
===引用ここから===
あはれ
秋風よ
情(こころ)あらば伝へてよ
ーー男ありて
今日の夕餉(ゆふげ)に ひとり
さんまを食(くら)ひて
思ひにふける と。
(中略)
さんま、さんま
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。
===引用ここまで===
全編を載せると長くなるので、詩の冒頭と結びの部分だけを引用したが、ここだけ読むと、くたびれた男が独り寂しく食卓に向かってサンマを食っている図しか思い浮かばないし、なぜ「そが上に熱き涙をしたたらせ」たのかが伝わってこない。
その意味は(中略)に隠されている。そこには作家で親交のあった谷崎潤一郎の妻千代に対する悲恋に苦悩する詩人佐藤春夫の姿がある。
恋多き谷崎は、なんと妻千代の実妹(「痴人の愛」のモデルとされる)との結婚を望む。千代はそのことで悩み、谷崎と親しい佐藤に何かと相談を持ちかけることが多くなる。そうこうしているうちにやがて佐藤の同情は恋情へと変わっていく。そのとき佐藤は妻香代子と別れたばかりだった……。
なんともドロドロした複雑な人間関係が背景にあるんですね。
詩人が切なくうたう「秋刀魚の歌」を思いながら、「さんま、さんま さんま苦いか塩つぱいか」と口ずさんでみる宵(酔い)である。


【温泉】一二三荘。


【タイムラプス】9月3日(月)5:32〜6:49の伊豆長岡の空。37秒。

https://www.facebook.com/aisakajiro/videos/10217304064055800/
今朝も昨日のほぼ同様に、撮影途中で雨になった。1時間撮ったからと撮り直しはせず。1時間分の雲の動きを圧縮しているので、いつもより少しゆったりした動きになっています。