いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

蚊帳の記憶

ヤフオクで落札した蚊帳が届いた。勿論、中古品だけれど、ざっと見た感じでは穴が空いているところもなく、結び目がほつれているとかもなく、吊るす紐もしっかりしていて、これで1000円なら絶対安い。いい買い物をしたと思っています。

蚊帳の中で寝たのは何歳くらいまでだったろう。小学校の4、5年生くらいまでかな。よく覚えていない。よく覚えているのは、母の実家に泊まった時のこと。母の実家はりんご農家で、母屋の裏手が広いりんご畑になっていた。便所は外便所で、母屋の玄関から10歩も歩かない距離なのに、夜に用を足しに行くのがとても怖かった。一色まこと描く『花田少年史』の世界ですね。それで、夕方、りんご畑で蝉の幼虫を10匹ほど捕まえて、そいつを蚊帳の内側に引っ掛けておいたわけ。幼虫が上の方にゆっくりした動きで這い上ってゆくのを観察しているうちに、いつの間にか眠りこけてしまった。そして翌朝、目を覚ましたら蚊帳の中が大変なことになっていた。羽化した蝉がけたたましく鳴き始めたのだ。中には羽化に失敗して、羽が歪んでしまっているのもいる。当然叱られて然るべき事態なのに、何故か叱られた記憶がない。

母親はどんな時も叱らない人だった。声を荒げたことは一度もなかった。いつも穏やかで、息子の我が儘を聞き入れてくれた。亡くなって5年になるが、幼い頃、蚊帳の中で津軽弁丸出しの昔話を聞かせてくれたことが、泣きたくなるくらい遠く、微かな記憶として蘇ってくる。蚊帳の中お伽話を聞かせてよ(あ)

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