仕事の帰り、いつもの床屋さんで散髪してもらった。
散髪はだいたい一ヶ月半おきに行く。前回行ったのは4月19日で、今年1月に急逝した高校の同級生の寺へお悔やみを言いに出かける前日だった。故人は寺の住職をしていて、寺は弘前城近くの寺町にあった。いざとなれば彼に後の始末をしてもらおうと思っていたら、先に逝きやがった。
今日の散髪も葉加瀬太郎似の息子さんにやってもらった。このところずっと息子さん。お母さんは先客の顔に剃刀を当てていた。
シャンプーを終え髭を剃る段になって、「では、倒します」とバーバーチェアを倒され、蒸しタオルで顔を覆われたそのとき、突如、右肩に強烈な痺れが走った。少し時間を置いたら治るかと思ってじっとこらえていたが、痺れは治らず、蒸しタオルが剥がされ剃刀が顔に当たろうというところで、とうとう我慢しきれずに手をあげて待ったをかけた。
「どうされました?」と心配する息子さんに、「右肩が痺れ、どうにも痛くて……。(剃刀を当てるのを)ちょっと待っていただけますか?」と伝えると、ソファで休憩を取っていたお母さんが寄ってきて、「あれあれ、それは大変、では髭を剃るのはやめて、今日はこれでおしまいにしてもらったら?」と息子さんに言い、息子さんも「そうしましょう。では、髪だけドライヤーで乾かしておきます」となった。
散髪の仕上げに私は整髪料を使わない。ビシッと分け揃えても、その後すぐまた湯屋で洗髪するから意味がないし、第一、あの整髪料のにおいが昔から苦手で馴染めない。なんでだろう。床屋さんにしかない独特のにおいなんだよね。
整髪料のにおいは子どもの頃から好きじゃなかったけど、襟首にぱふぱふとつけてもらうシッカロールのにおいは好きだった。最後に鼻背に指で白く塗ってもらうのも、何か吉兆のおまじないめいて好きだった。今じゃ、そんな床屋さんなんて、どこを探したってないだろうなあ。昭和30年代の話です。
【今日の一枚】ホタルブクロ(蛍袋)
別名「提灯花」。体育館の北側が山を切り崩した崖になっていて、草刈機の混合油をコンテナ倉庫に取りに行くときにここを通る。この崖の上に校舎建設で殉職された自衛隊員の碑がある。
その崖の中ほどにホタルブクロを見つけた。群生していると思いきや、咲いているのはこれだけ。あたかも殉職された自衛隊員を偲ぶ一輪として咲いているような気がした。
名前の由来は、花の中にホタルを入れて遊んだからとされる。花言葉は「忠実」。
【書】「幸」コウ・さいわい・さち・しあわせ(No.147)
手枷(てかせ)の形。古い字形からいえば、両手にはめる刑罰の道具である手枷の形である。これを両手にはめた形は執(とらえる)、報復刑として手による犯罪に枷をはめることを報(むくいる)という。報は両手に手枷をはめられて跪(ひざまず)く人を又(ゆう=手の形)で後ろから抑える形である。幸はおそらく倖(こう=さいわい)の意味であろう。手枷だけの刑罰ですむのは、僥倖(ぎょうこう=思いがけない幸せ)であり、重い刑罰を免れるというので幸というのであろう。それで幸に「さいわい」の意味がある。<『常用字解』より>
これは象形文字なんですね。もとが手枷の形からきているとは意外。幸せの意味とは真逆の気がするが、手枷をはめられるだけで別に命に関わる刑罰でなくて幸いだね、ということらしい。へええ。
字形のイメージは、すげ笠をかぶった人が胸まで浸かる泥の河を渡る姿で、沢田教一のピュリツアー賞を受賞した「安全への逃避」の写真を連想しながら書いた。
【温泉】一二三荘。
【タイムラプス】6月6日(木)5:10〜7:52の伊豆長岡の空。20秒。
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