いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

朧夜や米屋の弁当三百円(あ)

 この日を待ち焦がれていた。10日は「ビッグコミック」の発売日、そして「文藝春秋」の発売日。
 普段は月刊誌「文藝春秋」をほとんど買わない。が、芥川賞受賞作品が載る号だけ、たまに買う。今回は芥川賞受賞作で、沼津出身の現役大学生の宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」を読みたくて買った。
 宇佐見さんは、雑誌の「受賞者インタビュー」の中で「一番好きな作家は?」と訊かれ、「中上健次さん」と答えている。そして、「高校の頃、村上龍さんの『限りなく透明に近いブルー』をたまたま書店で見つけて読みました。すごく面白かったので、学校の課題で村上龍さんの『五分後の世界』を中心にレポートを書き、あれこれ調べるうちに中上作品に出会いました」と続ける。
 高校時代に『限りなく透明に近いブルー』をすごく面白いととらえた感性は並ではない。私はかの作品を大学時代に読んだ。当時受講していた講座の先生が「すごい作品が出た」と推奨していたので、その帰りに本屋へ走ってすぐさま購入した。買ったのは文芸雑誌「群像」(講談社)。それを帰りの電車で読むと、いきなり過激な性描写が飛び込んできてドギマギしたのを覚えている。それを高校生でありながら面白く読んだというのだから、すでにその時から研ぎ澄まされた感性をお持ちだったのだろう。
 私も、村上龍さんを経由して中上健次さんに行き着いた。行き着いたというだけで、感性の豊かさは宇佐見さんに遠く及ばないのだが。
 晩酌をちびちび呑りながら、ページを繰る。ページを開いて真っ先に飛び込んできたのが挿絵。絵の隣に「カット・kubomi」とあるが、浅学にして私はこの方を知らない。大写しの顔のパーツが二重にブレて描かれていて、なかなかインパクトのある絵である。挿絵を描くのだったら、こういう絵を描きたいと思わせる何かを感じた。
 次に書き出し。
 「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」
 もう、これだけで、文章のうまさが際立つ。芥川賞選考委員の島田雅彦さんが先に寄せた評で、「非常に文学的偏差値が高い」(静岡新聞1/21)と述べていたが、実際にどれくらい文学的偏差値が高いのか確かめたかった。それが今日、確かめられた。
 この後「推し」が、どういう経緯で「ファンを殴った」かが展開されていくのだが、そのワクワク感が冒頭で湧出する仕掛けになっている。うまいな、と思う。
 まだ、途中までしか読んでないけど、明日は旗日で休み。じっくり『推し、燃ゆ』を読めそうだ。


【今日の一枚】肉じゃが弁当。

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 これが今日の晩酌のつまみ。
 晩酌のつまみを作るのが面倒なときは、一二三荘の帰りに弁当を買ってきて、おかずだけつまむ。ご飯は後で納豆ご飯にしたり、レトルトカレーをかけて食ったりする。328円の弁当が午後5時半頃だと30円引きになるから、年金頼みの私には助かる。


【書】「再会」(No.595)

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 「長く別れ別れになっていた人どうしが、再びめぐりあうこと。」(『大辞泉』)
 「再」は、組紐(くみひも)の形。組紐を組むとき、その器具(冉=ぜん)の上下に一を加え、そこから折り返して、また組み続ける形であることを示す。折り返すことから「ふたたび」の意味となる。→白川静『常用字解』
 「会」は、もとの字は會に作り、蓋(ふた)のある鍋(なべ)の形。上部は蓋の形、〓の部分は食物を煮炊きする鍋の形で、下の日の部分はその台座の形である。いろいろな食料を集めてごった煮のようなものを作っているので、「あつめる、あつまる、あう」の意味となる。
〓↓ 

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【タイムラプス】2月10日(水)6:03〜7:20の伊豆長岡の空。38秒。

https://www.facebook.com/1298610339/posts/10225437598949089/?d=n


【新型コロナ】2/10(水)10:00現在(Yahoo!より)
新規感染者数→1,570(前日比 +353)
重傷者数→759(前日比 −14)
累計死亡者数→6,604(前日比 +94)