いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

散歩のお手本

文庫本を自炊していたら、たまたま「歩く効用」というコラムが目に留まった。1981年5月1日の「天声人語」である。作家横溝正史が街を歩くかわりに家の中を歩き回ったというエピソードの次に、永井荷風の散歩を紹介している。

『日和下駄』を書いた永井荷風になるともう、ほとんど散歩中毒である。「暇があったら歩くにしくはない。歩け歩けと思って、私はてくてくぶらぶらのそのそといろいろに歩き回る」。名所旧跡のめぐりが目的ではない。好んで歩いたのは、裏町であり、横道だった。溝川ぞいの仕立屋、いも屋、駄菓子屋、ちょうちん屋のなりわい、三味線の音、シイやカシや柳の緑したたる若葉、路傍の石地蔵、閑地に咲くハコベやヤブカラシの花、夕日の美しさ、富士の遠景、そういう風景の中を、荷風は「金を使はず相手を要せず自分一人で勝手に呑気に」歩き回った。…(以下略)

これ、まさに散歩のお手本ですね。日常の見慣れた風景の中に身を歩かせて、何気ない変化を感じ取る。4月から始まるであろう修善寺散策も、この荷風先生のように「自分一人で勝手に呑気に」やろうと、今から楽しみにしています。

徒歩7,996歩。

写真は、うちの子どもたちが通った中学校の道に咲くハクモクレン。何かいい匂いがするなあと見上げたら、これがハクモクレンだった。この道の街路樹にはハクモクレンが植わっていたんだ。これまで何度も同じ道を散歩していたのに全く気づかなかった。先週もこの道を通ったんだがなあ。そのときはまだ咲いていなかったんだろうか。ハクモクレンの開花期間がどれくらいあるのか気になってネットで調べてみた。すると、花期が短くあっという間に満開になり、見ごろは3日間ほどしかない、とある。へえ〜そんなに短いんだ。となると、今日明日辺りが満開の見ごろで、来週はもう散っているということか。花の命は短くて…というけれど、それじゃあまりに短すぎる。せめて桜ほどには咲いていてほしい。通りに面した中学校の体育館からは、バスケットのボールを弾ませる音がしきりに聞こえていた。4月からは一つ学年が上がりフレッシュな後輩を迎える。いよいよ新しい一年の始まりだね。さあ、がんばっていこう。体育館の脇を通りながら、部活に取り組む子たちに、そして花の命のような自身に、密かにエールを送ったことだった。んだ、わっつど、けっぱねばまいねど(津軽弁で、そうだ、一所懸命がんばらなくちゃいけないよ、の意)。ハクモクレン部活の声の高らかに(あ)

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