いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

己が吐く気は蜃気楼真夏の怪

写真は、JR藤沢駅辻堂駅間の踏切で急停車した貨物列車。湘南モールフィルから踏切を渡って湘南T-SITEに行こうとしたら、遮断機が下りて上下線の矢印が赤く点った。電車の通過を待っていると、まもなくして貨物線の上り踏切に貨車のない空の機関車が差しかかった。そのときである。この遮断機のバーを潜ったら確実に死ぬという思いが生々しくよぎったのだ。なぜそんなことを思ったのか。自分でもまったく理解できない。死神が憑依したのだろうか。まさか。

上り線を機関車が通過した後、今度は藤沢駅の方から長い貨物列車が警笛を鳴らしながら近づいてきた。何の警笛だろう。線路内に人でも入り込んだのだろうか。そう思って身を乗り出して辻堂駅方向を見遣ったが、人が入り込んだ気配はない。そのうち貨物列車は警笛を鳴らしたまま速度を落とし、目の前の踏切内でぴたりと停まった。何だ何だ何があったんだとたちまち人だかりができ、どこにいたのかヘルメットを被った警察官も出てきて、機関車の運転席に合図を送ったり線路内を覗き込んだりしていた。「おまわりさ〜ん、どうしたんですかぁ」と、中学生らしき自転車のグループの一人が道の向こうから警察官に声をかける。警察官は「よく分からん」と苛立たしげに、そして職務を忘れたような率直さで答えていた。

貨物列車がその場に停車していたのはほんの数分だった。機関車の腹には大きな字で「桃太郎」とペイントされている。へええ、貨物列車に名前が付いている。でも、なんで桃太郎なんだろうと考えていたら、がたんと大きな音を立てて動き出した。安全確認が済んだのだろう。

徐々にスピードを上げて走り去る貨物列車を見送りながら、私はまたまた不思議な思いに取り憑かれていた。私は貨物列車が急停車することを知っていたのではないか? そんな馬鹿なことがあろうはずもないのに、私が心の中で、もしかしたらこの貨物列車は停まるかもしれないと思っていたら本当に停まってしまった。私は超能力を信ずる者ではない。しかし、私が心に思ったことと実際に起こった現象との整合性を説明するには、超能力という言葉以外にしっくりくる言葉が見つからないのだ。真夏の怪である。(あ)

15,746歩。

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