いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

人生は楽しく

山田風太郎の随筆『あと千回の晩飯』(朝日文庫)を読んでいたら、こんなことが書いてあった。

夏目漱石が大正三年、弟子の一人にやった手紙の中で『私が(生よりも)死を選ぶのは、悲観ではない、厭世観なのである』といっている…(中略)糖尿病にかかると、みんな厭世的になるのかも知れない」

夏目漱石は、それから2年後の大正5年12月9日に49歳で亡くなるが、亡くなる直前の言葉は、寝間着の胸をはだけながら叫んだ「ここに水をかけてくれ、死ぬと困るから」だったという。

夏目漱石胃潰瘍に苦しんだことは知っていたが、糖尿病も患っていたことは知らなかった。「糖尿病にかかると、みんな厭世的になるのかも知れない」と言っているが、私に関していえばそれはたぶん当てはまらない。私も5年ほど前に糖尿病と診断され、自分の死をこれまで以上に身近に感じるようになったことは確かだ。しかし、だからといって厭世的になったとは思っていない。むしろ、その逆だ。今は人生が楽しくてしかたがない。朝は小鳥のさえずりで目を覚まし、勤めの行き帰りにはせせらぎの小径を歩き、夕方には一日の疲れを温泉に流し、夜は満天の星をつまみながら酒を呑む…。そんな生活がいつまでも続くように願っている。

夏目漱石は49歳で死んだ。私は今年、それよりも一回り多く歳を重ねた。不治の糖尿病を背負いながら、これから先どこまで生き延びるか分からないが、少なくとも今死んでも悔いがないような、そんな毎日を来年も過ごせればいいと思っている。徒歩6,991歩。

写真は、大磯の井上蒲鉾店。孫を小田原で降ろした帰りに立ち寄る。この店の蒲鉾を、青森で先祖代々の墓を守ってくれている実兄へのお歳暮として贈った。いずれ私もその墓に入ることになるかどうかは、まだ決めていない。伊豆の家の近くに、新たに自分の墓を設けるのもいいかなと思ったりもする。死ぬる前やるべきことを去年今年(あ)

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