いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

太鼓腹してイエグモのどこへゆく(あ)

 『オール讀物』7月号発売日。買うか買うまいか迷って、結局買った。
 決め手は、表紙に「第9回高校生直木賞発表」という活字が躍っていたこと。
 受賞作は逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』。逢坂を「あいさか」と読むことは、同作品が第166回直木賞候補に名を連ねたことで知った。
 この作品は直木賞選考委員のお一人である角田光代さんが強く推していたが、惜しくも最終選考から漏れた。が、高校生直木賞では本家の直木賞を受賞した今村翔吾『塞王の楯』、米澤穂信『黒牢城』を堂々抑えての受賞となった。
 で、今号に「高校時代にこんな本を読んできた」という特集が組まれていて、そこでは高校生直木賞候補になった方々の読書履歴が掲載されていた。
 その特集で逢坂冬馬は、高校時代に本をあまり読んでいなかったことを暴露したあとで、「中島敦の『山月記』はその淡麗な美文と痛切な悲哀が永遠に自分の記憶に残る作品となりました」と言い、さらに「夏目漱石の『こころ』に描かれた真に迫る内面描写は、読者としての私の「こころ」にも痛みを伴う情動を与えてくれました」と述べている。
 逢坂冬馬の高校時代は貪るように本を読んだというふうでもなかったようだ。それでも高校生直木賞を受賞してしまうんだから、その手の才能はもともとあったのだろう。問題は、そのような才能を、いつ、どこで磨いたかということだ。
 ご本人は「フィクションは専ら映画で摂取していました」と言っているけど、それだけじゃ文章の鍛錬にはならんでしょう。きっとどこかで鍛錬を積んだはずだと見ているがどうだろう。
 逢坂冬馬は最後にこうも言う。
「学業や部活、人間関係と多くの事柄に時間を割かれる高校生時代、自分の読書の量が足りないと焦っている方もいるのではないでしょうか。ですが読書体験として重要なのは、数やスピードではなく、その時折に好きな作品に触れ、その際に得た「感触」を大切にすることであると私は考えます」。
 これは何も文章修行に限らず、画修行にも言えること。文でも画でも、さまざまな経験によって得られる感性を大事にしたいですね。


【きょうの一枚】身重のイエグモ。

f:id:jijiro:20220623090758j:image
 孫どもがびしょ濡れのスニーカーで帰ってきた。それに扇風機で風を当てて乾かしていたら、イエグモがマシュマロのような卵を腹に抱えてやってきた。
 去年はサイドボードのガラス扉に産み付けたけど、今年はサイドボードがない。孫が小田原から来ることになって処分した。さて、今年はどこへ産み付けるつもりだろう。まさか、スニーカーの中じゃないだろうな。やめて、孫娘が卒倒するから。


【書】「坪庭」つぼにわ(No.1,100)

f:id:jijiro:20220623090744j:image
 「建物と建物の間や、敷地の一部につくった小さな庭。」(『大辞泉』)
 「坪」は、土と平(へい)とで、平らな土地の意。
 「庭」は、廷(てい。にわ・式場の意)に广(建物)を加えて、宮殿内の式場の意。転じて、なかにわの意に用いる。


【ディジタル画】『三四郎』 98(No.540)

f:id:jijiro:20220623090649j:image
 「もう廃さう。今日は何うしても駄目だ」と言って筆をおく原口画工。
 「今日は疲れてゐますね」。
 (美禰子は)「『私(わたくし)?』と羽織の裄を揃へて、紐を結んだ」。
 その美禰子が羽織を纏ったらどんなだろうと想像して描いたのが、きょうの画。
 今回もConcepts「水彩絵具H2」のみで描いた。
  Conceptsにもだいぶ慣れてきた。が、まだ間取りにチャレンジするところまで至っていない。


【タイムラプス】6月22日(水)6:46〜8:44の韮山方面の雨空。29秒。

https://www.facebook.com/100001436582002/posts/pfbid02Jgzj2bjgm7tgPP49SYcsBVXzDLv7DUcvt4jtE18k3QcpPiYZxb9Pb2ZBkWmisgarl/?d=n


【新型コロナ】6/22(水)10:00現在(Yahoo!より)
新規感染者数→15,384(前週同曜日比 +54)
重症者数→93(前日比 −7)
累計死亡者数→31,062(前日比 +17)