ランタンを揺らしきりりと隙間風（あ）

　昼過ぎに突然の訪問客があった。
　高校を卒業したばかりくらいの若い男である。明後日から坂の下で屋根工事を行うので近所に挨拶に回っているという。そして、その挨拶に来た若い男が言った。「鬼瓦がずれてますね。仕事が午後の休憩に入ったら見てあげますよ。もちろんお金はいただきませんからご心配なく」。鬼瓦がずれているなんて、指摘されるまでちっとも知らなかった。
　そうして午後3時ごろにその男は黒い軽のワンボックスカーでやってきた。屋根に梯子と脚立を積んでいる。今度は現場上司も一緒だった。
　車のナンバーが「湘南」だったので、どちらからお越しですかと訊いたら、小田原だという。小田原はどちらかとさらに訊いたら、蓮正寺だという。おおそうか蓮正寺か、螢田か、小田原アリーナの近くだな、孫はその近くから越してきて今この家に住んでいる。とかなんとか世間話に花が咲いている間にも、若い男の人は屋根に上って寸法を測り、その寸法を上司に告げる。すると上司はそれを受けて、「よかったら夕方までに見積もりをこしらえて持ってくるので見るだけ見てもらえますか」と言って一旦退却し、夕方、その通り見積もりを持って再びやってきた。
　すごいね。やることが早い。いわゆる「スピード感を持って」というやつだね。仕事のできる人だな。決して捕まえた獲物を逃さないプロのハンターだな。
　で、見積もりに目を通したら、なるほどの金額が弾き出されていた。書面には、出して出せなくはない額が踊っていたが、これから孫どもの物入りが始まることを思うと、気楽に請け負えない。ここはグッと我慢の爺でいよう。

【きょうの一枚】USB充電式キャンピング用ランタン。

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　2個セットで2,000円を切るというので、ネット通販で買った。これをお兄ちゃんと孫娘の部屋にそれぞれぶら下げるつもり。どっちも3畳間と狭いから大して明るくなくていい。ソロキャンプのテントにぶら下げる要領で使ってもらえばそれでいい。

【書】「宅宇」たくう（No.961）

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　「いえ。住まい。また、家の軒。」（『旺文社漢字典』第2版）
　「宅」は、宀(家)と、音を表す乇(たく。身をよせる意→托)とで、すまいの意を表す。
　「宇」は、宀(やね)と、音を表す于(う。おおう意→羽)とで、やね、ひいて「いえ」の意。転じて、天下の意を表す。

【ディジタル画】『吾輩は猫である』 82（No.403）

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　スチーブンソンは、ユーゴーの2行後にその名が出てくる。いわく、
　「スチーブンソンは腹這に寐て小説を書いたさうだから、打つ伏しになつて筆を持てば屹度血が逆さに上つてくる」と。まあ、著名な人の仕草を真似るところから入ったところで、成功したと聞いたためしがない。腹這に寐て小説を書けるのは、誰にも真似のできない天下一流の才能があるからなのだろうが、それを形だけ凡人が真似たところで、血が逆さに上ってくるような作品なんて書けるわけがない。
　漱石は談話『予の愛読書』の中で次のように述べている。
　「西洋ではスチヴンソンの文が一番好きだ。力があつて、簡潔で、クドクドしい処がない。女々しい処がない。スチヴンソンの文を読むとハキハキしてよい心持だ」
　漱石先生、スチーヴンソンさんにぞっこんですね。
　今回はすべて「アニメーター鉛筆」ブラシで描いている。使い比べてみての感想は、う〜ん、「Gガッシュ」の方が私には使い勝手がいいかな。