いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

弱き強き風みな我に鯉のぼり(あ)

 三浦哲郎『じねんじょ』(PDF)を読み返している。昨日紹介した文芸コンテストの制限字数が800字とあまりに少ないため、三浦哲郎のモザイク小説が参考になりはしないかと思ったのだ。

 この『じねんじょ』は、今も私の中で最高傑作に位置付けられる短編小説である。

 場所は街のフルーツ・パーラー。そこで実の父娘が初めて対面するシーン。
 
「……小桃は、父親が気取った老紳士でなくて、かえってほっとしていた。
「お前(め)は、なんにする?」
 ウエイトレスに手を上げて父親がいった。
「父ちゃんは?」
 小桃は思わずそういって、うろたえた。いい齢をして、忽(たちま)ち涙ぐんだからである。
「我(わ)だらクリーム・ソーダせ。」
「んだら、おらもクリーム・ソーダ。」
 と、四十女が椅子に軀を弾ませていった。
 二人は緑色の甘いソーダ水をストローで飲んだ。……」
 
 そのあと父親は、早起きして山から掘ってきたという「じねんじょ」を娘に手渡して別れるのだが、このシーンが実にいい。余計なことを一切そぎ落とした言葉の連なりから、父娘の位置がたちまち浮かび上がる仕掛けになっている。これが名人芸のなせる技だと唸らされる。
 そこで私はもうこれ以上のものは書けないと思ってしまった。だめです、書けません。
 だから、昨日の今日でごめんなさい。私のコンテスト応募下書き原稿はここに載せられません。


【今日の一枚】文芸コンテストを知らせるTwitter画面。

f:id:jijiro:20210506083727p:image
【書】「日射」にっしゃ(No.689)

f:id:jijiro:20210506083701j:image
 「日光がさすこと。また、地表に達した太陽の放射エネルギー。ひざし。」(『大辞泉』)
 「日」は、太陽の形。「ひ、太陽、ひかり」の意味に用いる。太陽は円い形で表すが、中がからっぽの丸い輪ではなく、中身があることを示すために、中に小さな点を加えた。太陽は月のような満ち欠けがないから丸い形にしている。→白川静『常用字解』
 「射」は、古い字形は弓と矢と又(ゆう=手の形)とを組み合わせた形。弓に矢をつがえて射る形で、「いる」の意味となる。→同


【ディジタル画】焼き鳥屋のおばちゃん(No.133)

f:id:jijiro:20210506083642j:image
 よく通った渋谷の焼き鳥屋「鳥政」の雰囲気を思い出して描いた。が、おばちゃんはこういう年配の方ではなかった。もっと若々しかった。またサウスポーでもなかった(と思う)。それでも、井の頭線ガード下の焼き鳥屋の雰囲気は出てるんじゃないかな。
 新しく手に入れた「マルチ水彩ブラシ」(無料)で描いてみた。このブラシをこしらえた方いわく、今のところ未完成とのことだけど、なんと、下描きから色塗りまでの一連の作業がこの一種類でできてしまう。ブラシの種類が多くて、何をどう使っていいのかよく判らない私としては、このご提供は大助かりです。ありがとうございます。


【タイムラプス】5月5日(水)5:49〜8:23の伊豆長岡の空。38秒。

https://www.facebook.com/100001436582002/posts/4028557240535456/?d=n


【新型コロナ】5/5(水)10:00現在(Yahoo!より)
新規感染者数→4,198(前週同曜日比 −766)
重症者数→1,083(前日比 −1)
累計死亡者数→10,486(前日比 +50)