いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

焼き鳥の煙逃して白露かな(あ)

 「時に、残月、光冷やかに、白露は地に滋(しげ)く、樹間(じゅかん)を渡る冷風は既に暁(あかつき)の近きを告げていた」

 中島敦『山月記』の、虎となりはてた李徴が即興の詩を詠んだあとの、名調子で格調高い自然描写である。

 ここに登場する「白露」とは、二十四節気の一つの「白露」である。秋分の日の15日前にあたる。手元の「歳時記」には新暦9月7日ごろとあって、柱にかけてある日めくりカレンダーの9月7日にも「白露」と載っていた。このころから秋の気配が感じられるようになる。

 思えば去年の暮れに、日めくりカレンダーをホームセンターで見つけ、今は毎朝めくるのを楽しみにしている。たかが日めくりカレンダーをめくる程度のことが楽しみとは、ちと大袈裟のようだが、ちっとも大袈裟ではない。本当に楽しみなのだ。

 これまでは、カレンダーもいよいよディジタルの時代かと、Yahoo!とかGoogleとか、それ以外にも使い勝手の良さそうなフリーのカレンダーソフトなどをバンバン端末に入れていたが、どれも帯に短し襷に長しで、おお、これだという決め手がなかった。

 今スマホで使っているカレンダーは、「スマート手帳」というフリーソフトだが、今までいろいろカレンダーソフトを試してみてこれほど使い勝手のいいものはないという結論に達して使っている、わけではない。単にソフトを取っ替え引っ替えするのが煩わしいということで、だらだら使っているだけのこと。

 スマホの普及によって、スケジュール帳の類はすっかりディジタルに取って代わられたかと思いきや、どっこい従来のアナログ手帳も頑張っている。

 銀座ロフトのスタッフによると、「従来スケジュール管理のために使われていたダイアリーは、今どんどんジャンルに特化したものが出てきていて、目標から自分のスケジュールを逆算できる『逆算手帳』とか、オタク活動をサポートする、チケットの購入の履歴とか、ライブのレビューとかを書き込めるような『オタ活手帳』、あとは歴史百科とか歴史のうんちくがわかるような『歴史手帳』、それに朝活をサポートするようなスケジュール管理ができる『朝活手帳』が人気になっている」のだとか。

 でも、いくら人気でも、そんなのに特化したら量産はできないでしょう。それで儲かるんですかね。まあ、儲かるからそうしているんでしょうけど。

 私はといえば基本的にはディジタル派だが、アナログも捨てがたいと思うことはままある。

 日めくりカレンダーもその一つ。毎日、儀式のようにカレンダーをめくることによって、不思議と、よし今日もがんばるぞとスイッチが入る。その日は過去に何が起こった日か、歴史の出来事への関心を呼び覚ますこともある。二十四節気から季節の移ろいを感じ、それが時に俳句のネタになったりもする。

 日めくりカレンダーは、何がいちばんいいかとって、枚数がだんだん減っていくことで目に見えない時間を可視化できるところがいい。それが日めくりでなければ味わえない味わいである。

 

【今日の一枚】一二三荘前の踏切。

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 生肉店で買い物をし、一二三荘に向かおうとしたら踏切に捕まった。そういえば「今日の一枚」をまだ撮っていなかったなと、慌ててポケットからスマホを取り出しパシャ。ちょうど松の生えているところが風呂場で、電車がカーブを曲がる時の軋み音を聞きながら湯に浸かる。

 

【書】「父老」ふろう(No.447)

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 「①村のおもだった年寄り。人望のある老人。②老人の敬称」(『旺文社漢字典』第2版)

 棒切れを振り回してゾンビを追いかけ回す図に見える。実際「父」という字は、手に鞭を持つ象形で、一族の統率者の意味がある。

 

【ディジタル画】カーディガンの女(No.83)

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 カーディガンの質感がない。時間に追われて描いたことがバレバレ。首も変。

 

【タイムラプス】9月8日(火)4:45〜7:10の韮山方面の雨空。36秒。

https://twitter.com/aisakajiro/status/1303609866238545920?s=21