【今日の一枚】すもも(季)
今年結実した唯一のすもも。すももはプラムとも言い、私が今の物件の成約記念に不動産仲介業者からもらった苗もプラムという呼称だった。が、厳密には、すももはプラムの一種で、英名をJapanese Plumと言うそうだ。
それでも私は、プラムではなくすももと言いたい。それも表記はひらがなで。ひらがな表記は電子活字だと読みづらいが、それでも表記はひらがなにこだわりたい。私にとってすももは、そういう果物なんです。
小学生の頃、夏休みになると母に連れられて、母の実家に遊びに行った。母の実家は津軽平野のリンゴ農家だった。母屋の裏を小川が流れ、便所は母屋玄関を出た外の小屋にあった。風呂はヒノキの沸かし風呂で、これは台所の隣にあったが、私にはこの風呂に浸かった記憶がない。泊は大抵一二泊だったから、風呂を借りないで済ませたのかもしれない。
ある日、お盆の墓参りの途中に寄った家ですももが振る舞われた。「うんと、食べへ」(たくさん、食べなさい)と言って出されたすももは白磁の大皿に山盛りで、どれも真っ赤に熟していた。夏の昼間に食うものといえば、西瓜であり唐黍(きみ)であり真桑瓜(まぐぁ)であり青りんごだった私は、このとき初めてすももという食い物を知った。
噛むとパッと弾ける甘酸っぱい香りがなんとも上品に思えた。西瓜も唐黍も真桑瓜も青りんごも、ガブリと噛んで味わうものだが、このすももだけは違った。
果肉を包んだ薄皮に歯を当てて皮を破り、口をすぼめるようにして果汁を吸い、歯が大きな種に当たったところで実を回転させて果肉をそぎ落として食う。がぶりとはいかないのである。
青森に生まれ、高校まで青森で過ごし、高校卒業と同時に東京に出てきた。東京・世田谷で4年間下宿生活をした後は神奈川に居を移し、カミさんと一緒になってからは、横須賀→平塚→藤沢と引っ越しを重ね、今は伊豆の地を終の住処と定めて余生を送っている。
庭を持つ生活ができたら、何が何でもすももを植えたいと思っていた。それが今ようやく実を結び、去年は待望の実が4個生った。今年はたった1個しか生らなかったが、生ってくれただけでもありがたいと思う。すももの実を見るにつけ、幼い頃に食ったあのときのことが甘酸っぱい思い出とともに蘇るのである。
そこで今日のアフォリズム。
<すももは、たった一個でも、ふるさとの甘酸っぱい思い出をあまねく蘇らせてくれる。>
【書】「谷」コク・たに(No.156)
▼甲骨文
▼金文
谷の入り口の所の形。上部のハの形が重なっているのは、山脈(やまなみ)が重なるように迫っている形。下部は口ではなく〓1(きょ=凵の上部を内側に少しすぼめた形)のような形で、谷の入り口の形であるから、全体の形が「たに」を示す。甲骨文字は谷の入り口の所に〓2(さい=神への祈りの文である祝詞(のりと)を入れる器の形)を置いている形であって、そこは聖所として祀(まつ)られたのであろう。すべて水源の所は聖所として祀られることが多かった。
〓1(手書き画像)↓
〓2(手書き画像)↓
甲骨文は左向きの笑顔で、金文は右向きの笑顔に見える。あえてそう見えるように意識して書いた。どちらも見てすぐに谷と判るが、上部が𠆢の形だともっと山が連なるように見えるだろうに、そうではなくハの形なのはどうしてだろう。『古代文字字典』には上部を𠆢とする例が一つもない。書きながら、パーツの配置バランスの問題かなと思ったが、どうもそうでもないらしい。
【タイムラプス】6月15日(土)5:10〜7:56の韮山方面の雨空。20秒。
https://www.facebook.com/100001436582002/videos/2352189864838877?s=100001436582002&sfns=mo