いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

つくしんぼそこから富士は見えさうか(あ)

茅ヶ崎の歯医者の予約は午後2時だったが、久々に狩野川の土手をのんびり歩きたくて、少し早めに家を出た。

仲春の陽を浴びながら歩いていると、犬の散歩の親子連れ、ジョギングを楽しむカップル、颯爽と駆け抜ける自転車とすれ違う。

滔々と流れる狩野川の先に富士山がうっすらとそびえ、そのたおやかな稜線が箱根連山に伸びて天城に連なる。天城は狩野川の源、そこからの小さな流れがやがて大きく膨らんで岩ゴツゴツの城山にぶつかり、蛇行しながら肥沃な土を運んで駿河湾に注ぐ。

土手に立ってぐるり360度眺め渡し、こうして豊かな自然に囲まれた伊豆に骨を埋めることになった縁を思う。青森に生まれ、高校まで青森で過ごし、大学入学で東京に出てきて、カミさんと知り合った。横須賀に住み、平塚のアパートに移って、藤沢のマンションをローンで買った。ローンがまだ残っているのに伊豆の今の家が気に入って勧奨退職で手に入れた。

昨日(3/21)の「天声人語」に、詩人の立原道造は、東京帝大で建築を学んだ建築家でもあったと紹介されていた。「夢みたのは、自身が週末を過ごす小さな家だった」とある。が、詩人は24歳で夭折し、夢は叶わなかった。

私は詩人でも建築家でもないが、豊かな自然に囲まれて生活するスタイルには昔から憧れていた。そして今、かつて憧れた生活が実際にできている。夢が叶ったと言えば叶った。

ここに落ち着くまでには様々な偶然の巡り合わせがあった。その気になればどこだって住めば都さと嘯きながら、退職後のライフスタイルを模索し、青森に戻ること、阿武隈で山羊を飼うこと、米沢でそば打ちをすること、尾花沢でスイカ栽培をすることなど、いろいろ考え、現地にも足を運んだ。

そんな模索をしていたところへ、ポンと今の家が現れた。築40年近くの家で、下見の案内をしてくれた地元の不動産屋の人は、だいぶ傷んでいる旨を言い、(買うなら)じっくり考えたほうがいいよとアドバイスをくれたが、それまで朽ちて人が住まなくなった家々を見てきた目には一目で十分住めると見えた。それで即決し、カミさんには事後報告。いわゆる衝動買いです。

ずっと神奈川に住むつもりでいたカミさんには寝耳に水で、最初は素直に受け入れる気持ちにはなれなかったようだ。それが次第に気持ちが軟化したのは、ここが孫の住む小田原から車で1時間ちょっとで行ける場所というのが最大要因だったのではないかと見ている。これが、青森や福島や山形だったら、たぶん譲歩はなかっただろう。

伊豆の家を見つけたのは偶然でも、そこを終の住処とすることにしたのは必然かもしれない。土手に立って四方を眺め、川のせせらぎを聞きながら、そんなことを思った。

 

【季節の花】ツクシ(土筆)

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茅ヶ崎の歯医者へ行くのに、伊豆長岡駅まで狩野川の土手を歩いた。土筆が顔を出すにはそろそろいい頃合いかなと思っていたが、土手に上がったらこんなにびっしり土筆でおおわれていた。

今年の桜は、開花予報では各地とも平年より早めというが、庭の柿も新芽を出していたし、今年は土筆も含め全体的に春の彩りが早いのかもしれない。

 

【書】「永」(No.73)

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流れる水の形。永は水が合流して勢いよく流れるところで、水の流れの長いことをいう。水の流れの長いことから、すべて「ながい」、とくに時間の長く久しいの意味に使われることが多い。<白川静『常用字解』>

バラバラになりそうなパーツの集まりに、どう統一感を持たせようかと、そのことを意識しながら書いた。川の合流地点で水が勢いよく流れる様を、かすれで表現した。

 

【温泉】一二三荘。

 

【タイムラプス】3月22日(金)5:35~7:40の伊豆長岡の空。

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