いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

饅頭の湯気噴き出でて冴返る

【写真】伊豆長岡温泉饅頭「黒柳」。

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この店舗は放課後児童教室の脇道を渡った2軒先にあり、店頭でバス通りに向けて威勢よく湯気を噴き出している。
伊豆長岡には温泉饅頭屋が7店舗もある。私の贔屓は「柳月」で、伊豆長岡の土産を買う時は迷わずここの饅頭を選ぶ。伊豆へ住むようになって最初に口にしたのが「柳月」の饅頭で、私の温泉饅頭に対する思いを一変させてくれた饅頭である。
それまで、温泉饅頭なんてどこだって同じだろ? と思っていた。が、「柳月」の饅頭を頬張った途端に、うっ、これは旨い、今まで食べた中でいちばん旨いと舌が反応したものだ。以来ずっと、土産なら「柳月」と決めている。「クラブいずのくにメンバーズカード」を提示すると5%引きになるのも嬉しい。
写真の「黒柳」の饅頭は、伊豆の国市観光協会の評価では「なめらかな薄皮とさっぱり餡」となっているが、私は食べたことも買ったこともない。「さっぱり餡」が、どれくらいさっぱりなのか、一度試しに食べてみようかと、濛々と噴き出す湯気を見る度に思う。
この「黒柳」の並びに「あずさ」という饅頭屋があったというが、2005年3月に店を畳んでしまって今はない。伊豆長岡温泉饅頭といえば「あずさ」というくらい人気の饅頭屋だったようだ。閉店になった年のブログに当たると、残念というコメントがたくさん出てくる。
実はこの「あずさ」のご主人が、あやめ湯で一緒になる「元饅頭屋さん」なのである。饅頭作りをやめて今は主にテレビ番組を作っている。テレビ番組制作会社の取締役をしていて新宿市ヶ谷に事業所を持つご身分、と書くと、いかにも精力的にあちこち飛び回っている行動派の印象だが、ご本人はおっとりした方でいかにも温厚そうな好好爺然とした方である。たぶん会社は息子さんが全面的に経営していて、ご自身は悠々自適のご隠居の構えなのではないかと私は見ている。
木材店の会長さんが、いつぞやあやめ湯でご一緒になった折、「あずささん、あんたもう一回饅頭やんなよ、あんたが饅頭やんないと寂しいよ」と元饅頭屋さんに話しかけていたっけ。そのときの元饅頭屋さんのはにかんだような顔が強く印象に残っている。
息子さんが「あずさ」の後を継いでいれば、伊豆長岡で一番人気の温泉饅頭を私も食べることができたかもしれない。しかし、息子さんは後を継がずに番組制作の会社を設立した。それでお父さんはやむなく饅頭屋を畳んだのだろう。
そのときのお父さんの思いはどんなだったろうか。それまで作り上げてきた店の看板を降ろすことは断腸の思いだったに違いない。幾度も親子で膝を突き合わせて話し合ったのではなかったか。そして、最終的には息子さんの選んだ道を支援する側に回った。
ただ、会社名にそのまま「あずさ」を使うことで、お父さんの築き上げたものは継承された。木材店の会長さんは寂しいと言い、その思いは誰も同じだけれど、自分の代で店仕舞いを決めたお父さんの潔さは賞賛してよいのだと思う。
伊豆長岡で催される様々なイベントには、競合する7店舗の饅頭が一箱に詰め合わされて販売される。各店舗の味を食べ比べるには、この詰め合わせをゲットするのが最も手っ取り早い方法なのだが、イベント限定売り切れゴメンの販売なのでなかなか手に入らない。それが難点。
イベントは大概日曜に行われ、日曜は伊豆を離れることが多くて、これまでまだ手にしたことがない。でも、いつか必ずゲットして、伊豆長岡温泉饅頭を食べ比べてやろうと思っている。(あ)

【タイムラプス】1月16日(月)10:08〜11:43の伊豆長岡の空。23秒。

【あやめ湯】18:33〜19:09。5→3人。

【歩数】5,990歩。