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いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

忘年会広重の絵の宿場にて

朝いちばんで伊豆を発ち、藤沢に戻る。

空に更待月が残り、星の瞬きが先週土曜ほど鮮やかでない。狩野川の流れる先に暁の富士山がうっすらと見える。

♪さ霧消ゆる湊江の 舟に白し朝の霜♪

思わず口ずさむ「冬景色」の歌。今から20年ほど前の平塚勤務時代、同僚に、この歌なんだっけと訊かれ、ためらわず「早春賦」と答えてしまったことを懐かしく思い出しながら、ふ〜と白い息を吐き出した。

マンションの玄関を開けると、朝餉の温かい空気に包まれた。カミさんが私の顔を見て、「ちょうどよかった、朝ごはん食べてないんでしょ?」と言って焼けたばかりのピザトーストを皿に載せた。

朝いちばんで帰ると言っておいたから、たぶん朝飯は用意してくれていると思ったが、朝飯は昨夜のおでんの残りで済ませてあった。「食ってきたから、いらない」と言うと、「あ、そう。じゃ、昼に食べて。あたし出かけるから」と言って、どこへ行くとも告げずに9時過ぎに出かけて行った。

カミさんが行く先を言わなければ私も夕方の呑み会のことは言わない。今日は帰りが遅くなるから晩飯はいらないとも言わない。

37年間ずっとそうだった。電車を乗り越して、熱海だ沼津だ帰れないとなっても家に連絡をしたことはなかった。朝いちばんの上り電車で家に帰ってシャワーから出ると、いつの間にかその日の朝めしと弁当がテーブルに出ている。

出勤し、「またやってしまった、昨夜は熱海のファミレスで朝を待ったよ」と弁当を広げながら同僚に報告すると、「どんな人か、一度奥さんを見てみたい」と、こぞって言ったものだ。何も言わず、旦那にそっと弁当を持たせる人ってどんな人だろうというわけだ。

それで私は猛省するかといえば決してそんなことはなく、性懲りもなく夜の小旅行に無駄金を落とし込むのである。

夕方、藤沢で、夏の呑兵衛旅行の打ち合わせ兼忘年会。今年の呑兵衛旅行の行く先は宮城。宮城は私も何度か訪ねたことがあるが、体調不良で本日欠席の呑み助が宮城だけ行ったことがないというので、では今年は宮城にと決まった。私は、呑めればどこだっていい派だが、まだ行ったことのない鳴子温泉に一泊するというので、それがちょつぴり楽しみでもある。

今年は宮城を旅することで、青森から始まった呑兵衛旅行も、これで東北六県すべてを経巡ることになる。あとは新潟、富山が残っているが、ここは無理をしないで一息つくのもいいかもしれない。


【写真】藤沢駅コンコースに飾られた歌川広重の浮世絵。呑み会の帰りに目に留まった。

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藤沢は、お江戸日本橋から数えて東海道6番目の宿場。プレートには「遊行寺」の文字が見えるが、絵にあるのは手前にでんと構えた鳥居と奥の江ノ島で、遊行寺らしき建物は見えない。

鳥居の後ろに描かれる太鼓橋は、藤沢橋だろうか遊行寺橋だろうか。下を流れる川は境川に違いない。とすれば、橋を渡った集落のどこかに遊行寺があるはずだが、宿場の家並みに埋もれてしまったか。それとも浮世絵師の目に留まらなかったか。

いずれにしても、その家並みの上方に江ノ島が描かれるのは、方向としてはありえないわけだが、いかにもと思わせてしまうところが「絵の力」なのだろう。この大胆な構図、デフォルメを大いに参考にして絵を描いていければと思う。(あ)


【徒歩】18,097歩。