いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

敬老の日や舟集ふ日本橋

平塚「海楽人」呑兵衛月例会のメンバーで「お江戸日本橋舟めぐり」を楽しむ。
昨日、月例会の重鎮から「明日は台風で大雨の予報だけど、大丈夫かね」という留守電が入っていた。かけ直したら、奥さんから「無理しない方がいいんじゃないの?」というアドバイスを受けての電話とのこと。他のメンバーは(予約を入れた)私の判断にお任せすると言っているがどうする? というので、「やりましょう、現地へ行ってダメなら浅草で一杯呑って帰ってきましょう。電車が止まったらその時はその時」と、あくまで強気の私。先月の月例会に参加できなかったので今回は何が何でも、の勢いである。でも、台風予報から推して、重鎮が心配するほどひどくはならないだろうという読みはあった。
朝、雨はまだ来ない。で、辻堂駅まで歩く。カミさんに「歩いて行くの?」と訊かれ「うん」と言ってしまった。「歩いて行くの?」の後に「送っていくけど」と続くはずだったが、その声を聞く前に「うん」と言ってしまった。明るいうちから呑んだくれる魂胆が後ろめたかったのかもしれない。
集合は日本橋11時半の予定だったが、伊東屋でフィクサチーフを買うつもりだったので、家を早めに出て新橋から銀座まで歩く。銀座は10時前でどの店も開店準備中。それでも既にだいぶの人が歩いていた。

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伊東屋もまだ準備中だった。それで、開店時間まで銀座の裏路地を散策することにした。瀟洒なビル街の裏には、時代に取り残されたような建物がぽつりぽつりと建っている。私はこういう建物が好きだ。でも早晩取り壊されていくだろうことを思うと、いくばくかの哀愁を感じないわけにはいかない。

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集合場所の日本橋には11時半に全員揃った。舟が出る12時半まで1時間余裕があるというので、重鎮が小学生時代を過ごしたという界隈を散策することにした。
まずは「ミカドコーヒー」。重鎮がここの路地でローラースケートをして遊んだ頃からあった店というから優に60年は経っている。ここで「日本橋ブレンド」(レギュラーコーヒー)を飲む。430円。

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店を出て、路地を100mほど奥に進んだこの辺りに重鎮の家があったという。この中華料理店も当時はさぞかしモダンな建物だったんだろうな。タンメンが30円だったとか。前の路地の真ん中で生きた鶏の首をコキっと締める光景をよく見たと、周囲のたたずまいを確かめながら懐かしげに語ってくれた。

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さて、メインの舟めぐりだが、舟は定員10名の小型の舟で搭載エンジンは電動とのこと。霧雨が降ったり止んだりの天候だったが、屋根付きで窓は透明の幌になっていたから雨の影響はほとんどなし。受付をしていた女性の方が、受付を閉じたと思ったら、たちまちガイドに早変わりして舟に乗り込む。滑らかな口調であれこれガイドする風貌は、どこか民進党新党首に似てなくもない。

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舟はガイドさんの名調子で、橋を次々と潜っていく。日本橋をスタートし、常盤橋、江戸城石垣、ファン垂涎の的JR橋を潜り、水道橋で神田川に出る。しばらくJR中央線沿いに下ったところの御茶ノ水渓谷は、かくも豊かな緑の濃い谷であったかと、これは舟からでなければ気づかない新鮮な発見だった。いつも上の道からしか見ていない東京の景色も、下の川から見るとまるで違った景色になる。舟に乗る前までは、隙間なく並ぶビルの薄汚れた背後を見るだけの、大して面白味のないツアーとの先入観があったが、どうしてどうして、右に左に、前に後ろに、興味深い眺めを十分堪能することができた。

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ガイドさんの興味をそそる解説と相まって、手渡された資料もまた充実していた。資料の浮世絵に描かれた風景を、今まさに同じ目線で見ているという高揚感も味わいながら舟は隅田川へ向かっていく。

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隅田川は大きかった。江戸時代、大川と呼ばれたのが実感できる。舟が10人乗りの小舟だったから余計そう感じたのだろう。時折、他の大型船の引き波に大きく揺れもしたりしながら、兜町の下を通って再び日本橋へ戻る。いやあ、思った以上に楽しめた舟めぐりでした。

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三越前から地下鉄銀座線に乗り、終点浅草駅で降りてそのまま神谷バーに直行。店に入ったのは午後2時半を過ぎていたが、よくまあ昼からこれだけの人が呑んでいるものだというくらいの混雑ぶりで、4人座れるテーブルを探すのに一苦労だった。

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実は私は神谷バーに入るのは初めて。注文は全て食券だが、これが実に手際よい。テーブルでパッと手を挙げるとサッと近寄ってきて、食券を片手でキュッと千切る。この仕草がいかにも格好いい。頼んだ料理も待たせないですぐ持ってくる。これだもの、人気なわけだ。名物の電気ブランをぐびぐび呑んで、おっと、気がついたら午後5時を過ぎていた。あいにくの天候ではあったけれど、なかなか素敵な一日でした。機会があったら、また神谷バーに行きたいな。(あ)

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17,065歩。月間記録。