いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

山百合や富士と真っ向咲き向かふ

このところ、晩酌の友に『難訓辞典』(中山泰昌編 東京堂出版)の第二部(姓氏・地名)をぱらぱらめくって楽しんでいる。
放課後児童教室を利用する子どもたちの名簿を4月最初に見たとき、どうやって読むの? という名前がずらり並んで面食らったが、この『難読辞典』に載っている姓氏だって、どうしてどうして、これなんて読むの? のオンパレードである。
例えば、「四月」あるいは「四月一日」は何と読むか。「わたぬき」さんと読むのである。昔は四月を衣がえの時季として、冬衣装の綿入を袷にしたからだという。では、「八月一日」は? これは「ほづみ」さんと読む。陰暦の八月は既に稲も実って、その穂を摘む季節、あるいは刈穂を積み上げる季節となるから。だったら現在普通に遣っているような、綿貫、穂積とそのままずばりの漢字を当てればよさそうなものだが、そうしなかったのはなぜだろう、なんてことを考えながら、焼酎の水割りを呑み、半額で買ってきた惣菜を摘むのである。
「九」の一字はどうでしょう。これは「いちじく」さん。ここまでくればもう洒落の世界ですね。明治になってから一人ひとり姓氏を持たなければいけなくなり、文字に不慣れな人たちが村の物知り爺さんか誰かに頼んで姓氏を考えてもらったんでしょう。おめえんとこには無花果(いちじく)が植わってあるから「いちじく」とでも付けんべえ、と考えた物知り爺さん、字をしたためようとしたが「無花果」という漢字が浮かんでこない。さて困った。そこで苦し紛れに「九」と書いて登録した…。そんなストーリーを頭に描きながらぐびっと呑るのである。
それにしても姓氏には、珍名、奇名がなかなかに多い。日本の姓氏の種類はいったいどれくらいあるのかと調べてみたら、なんと29万1129種類もある(『日本苗字大辞典』1997年版)。すごい数です。世界でもそんな国はないんじゃないだろうか。
考えてみれば、「東海林」を「しょうじ」さんと読むのは、ほとんど誰でも知っている。では、なぜそう読むの? と訊かれてたちどころに答えられる人は少ない。「東海林」は山形県に多い姓氏で、Wikipediaには「荘園を司っていた職業部の庄司に対し、東の海を渡ってきた林氏が荘園の管理を任され「東海林」と名のったことにより職名の「しょうじ」と読むことになった」とある。
そんな姓氏の由来を知るだけでも面白い。歌手に東海林太郎がいて、私が住んでいた家の近所に東海林さんという人がいて、それで私は小さい頃から「東海林」を「しょうじ」と読めただけで、まだまだ知らない姓氏はたくさんある。そんな姓氏を辞典で見つけ、頭のなかで勝手にストーリーをこしらえながら晩酌を楽しんでいるのである。
写真は、いつも通る寺院脇の坂道に咲いたヤマユリ

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同じ擁壁の上には真っ青な紫陽花も咲いていたが、今はすっかり色褪せて、主役をこのヤマユリに譲った形だ。ヤマユリ花言葉は「荘厳」。いかにもおごそかで威厳に満ち溢れた姿には、他を寄せ付けないオーラがある。
翻って庭に自生するユリ。

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こちらはタカサゴユリだが、茎をそこここに伸ばして花の咲くのを待っている。ユリは他の庭草と違って、その厳かな姿のおかげで雑草と扱われない。うじゃうじゃ群生せずに孤高を保つようにポツリと咲くから、そのままそっと咲かせておきたくなるんだね。(あ)
タイムラプスは、7月7日(木)5:27〜7:59の伊豆長岡の空。
あやめ湯(18:36〜19:12)6→4人。

2,808歩。