いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

幼子の一途の祈り水ぬるむ

写真は、熱心にラジコンを組み立てるお兄ちゃん(昨日)。この後、できあがったラジコンを持って近くの小学校まで行く。

最初は滑り台を上らせようとしたがうまくいかず、次に地面を走らせたらタイヤの跡が絵のように描かれ、それが面白いと言ってターンを繰り返す。校庭の隅には前日の雨でできた水たまりが残っていて、水の中を走らせたら動かなくなるからねという私の忠告を最初のうちこそ聞いていたが、そのうち本当にそうなるかどうか試してみたくなったのだろう、ラジコンを水たまりに突っ込ませてしまった。

この水たまりが意外に深く、タイヤがすっぽり水に浸かって動かなくなってしまう。この場合、ほらね、だから言ったじゃないの、とは言わない。家へ帰って急いでタオルで拭かないと、と処置法を具体的に言う。お兄ちゃんは一刻を争う救急車のように濡れたラジコンを持って駆け出し、私は孫娘の手を引いて追いかける。

家に着いたらお兄ちゃんは、手術台よろしく床にバスタオルを敷き、4本の単三電池を取り出しタオルで拭いていた。これで乾かしなさいと洗面所からドライヤーを持ってきてお兄ちゃんに渡す。そしてしばらく様子を見る。すぐに手助けしない。というか、私にもそれ以外の方法が見つからない。

しばらくドライヤーを当てた後、自分で勝手に電池を新しいのと交換する。リモコンのスイッチを入れる。でもやっぱり動かない。本人は諦めきれないという顔つきだったが、この時点で私は半ば諦めていた。どれ貸してごらんとお兄ちゃんからラジコンを預かり、4箇所ネジ止めしてあったカバーをドライバーで外して露わになったICボードにドライヤーを当てる。こんなことで動くとも思えなかったが、いわば最後のお見送りの儀式のつもりである。

クルマちゃん、動いて。お兄ちゃんが祈るようにつぶやく。その一途な目線を強く感じながらカバーを取り付け、リモコンのスイッチを入れる。くっ。かすかに手に振動が伝わった。ぷるん。タイヤが反応した。ぷるるるん。タイヤが回り出した。床に置いたら、おっ、勢いよく走り出した。やった、直った、元に戻った。じいじ、ありがとう。

孫よ、その言葉、その感謝の気持ちを忘れるでないぞ。そしていつかは自分が感謝されるような人間になれよ。(あ)

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12,043歩。