いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

雛人形話し相手となる齢

写真は、藤沢の自宅リビングに飾られた雛人形。ここ数年飾られていなかったと思うが、どういう風の吹き回しだろう、私が伊豆から戻ったら飾ってあった。
この雛人形は、いつの間にか家にあった。たぶんカミさんの娘時代に横須賀の実家で飾られていたのだと思う。それを、娘が生まれたときにカミさんが実家から運んできたものと思われる。今見ると傷みはほとんどないから、義母が娘だった頃までは遡らないだろう。カミさんの初節句に買い揃えたもののようだ。
カミさんには三つ違いの妹がいて、神戸に嫁いで四人の子どもを育て上げた。横須賀の実家に飾られた雛人形ならば、その妹もこの雛人形の前に座ったはずで、ならばカミさん個人の所有とはならないところであるが、なぜかなっている。姉の権限で自分の所有物にしてしまったか、それとも妹が自ら姉に所有権を譲ったか、そのあたりの経緯は知らない。
娘が小田原に嫁ぐ前は時期になると毎年飾られていた。何段飾りという豪華なものでなく、いわゆるマンションタイプの、一箱に収まるくらいの小ぢんまりしたものだが、それでも飾れば多少華やかな雰囲気は味わえた。
娘に女の子が生まれたとき、この雛人形を私にくださいと言ったかどうかは覚えていない。たぶん言わなかったのだろう。カミさんも、持って行きなさいとあえて言わなかった。孫たちが藤沢にしょっちゅう来ていた頃は毎年飾られていたが、だんだん来る機会も少なくなってくると、自然に雛人形の出番もなくなっていった。
孫が来ないにもかかわらず雛人形を飾ったカミさんの気持ちを、どう押し測ればいいだろう。自分が娘だった頃のことを懐かしみたいと思ったのだろうか。月曜に私を伊豆に送り出し、金曜に私が戻るまでの一人暮らしの話し相手を雛人形に求めたのだろうか。
今日の午前中、カミさんは横須賀の実家に一人暮らす母の様子をずっと私に話し聞かせた。溜まったものを全部吐き出すかのごとく淀みない。私はただそれをうんうん聞くだけ。私の長男がやっているレストランに義兄に連れられて行ったこの前なんか、おばあさん(実母)は歌を歌ったりしてレストランで働いている人たちに人気だったとか、詐欺グループを家に招き入れて指輪と着物を2千円で売って義兄にこっぴどく叱られたとか、自分で下の始末ができずトイレを汚して困るとか、そんな話を延々とする。深刻な話し方ではなく、笑いながら話してくれるので私も助かる。
義母は今年で94歳になるが、カミさんはその姿を、やがて来る自分の姿と重ね合わせているのかもしれない。そして齢も七十、八十を過ぎたとき(たぶん私はこの世にいないと想定)、自分の話し相手をしてくれるのは、この雛人形だけだと思っているのかもしれない。(あ)

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12,324歩。