いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

拙さもよし鶯の初音かな

朝、六畳和室の明り障子を開けて庭を眺めていたら、紅椿の葉がふわりと揺れた。おや、と見ていると、それはすぐに葉の茂みから飛び出して隣の木槿(むくげ)の枝に移った。緑がかった橄欖(かんらん)褐色の羽はまさに鶯。鶯が春を告げにやって来たのだった。

姿を見せたのはほんの一瞬で、すぐまたどこかへ飛んでいってしまったが、こんな放ったらかしの庭でも鶯が訪ねて来てくれることを嬉しく思った。家のそばのどこかから鶯の声が聞こえてくる。今年初めて聞く。初音です。さっき飛び去った鶯だろうか。ホーキョキョケキョと啼き声はまだ練習中のようで本番みたいにはいかないが、その初々しさがまたいい。これからしばらくの間、鶯の声とともに朝を迎えられると思うと、なんだか浮き浮きしてきます。

その鶯の初音に誘われて、というわけでもないが、今週が見頃だというので、本家本元の河津までカワヅザクラを見に行くことにした。伊豆で暮らすようになって3年経つが、まだ河津の桜を見たことがない。西伊豆まではバイクで水を汲みに行くくせに、河津までとなるとつい尻込みしてしまう。というのも、高所恐怖症の私はあの七滝のループ橋がダメなのだ。それがネックになってこれまで河津へ行くのを避けてきた。でも、下を見なきゃいいんだな、橋の真ん中を走ればいいんだな、ピークは今週、行くなら今日だ今日しかないと自分に言い聞かせて出かけることにした。

大仁のいつものガソリンスタンドで給油し、狩野川大橋を渡り修善寺を越え、湯ヶ島の月ヶ瀬に入ったところで、道端に「梅まつり」の幟が目立ち出した。そのまま天城峠に向けてバイクを走らせると、ほどなくして月ヶ瀬梅林の案内板が目に留まった。

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時計は10時半を少し過ぎた頃だったし、ついでに寄ってみるかと寄ってみたら、天城連峰を見晴るかす山の斜面に白梅紅梅が咲き乱れ、なかなか見ごたえのある景観を堪能することができた。これを見たらもう河津へ行かなくてもいいかと思われるくらいみごとだった。

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梅林の道にはAKBの少女隊が梅の実を収穫している写真も展示されている。私は知らなかったけど、月ヶ瀬梅林は割と名の知られた梅林らしい。

正午少し前に月ヶ瀬を出発。天城トンネルを抜けるとそれまでの上りが下り坂になり、緊張も徐々に高まってくる。車は大型トラック、バスも含めて切れ目なく私を追い越してゆく。ちょっとずつカワヅザクラが見え出すが、カーブカーブの連続でそんな景色を楽しむ余裕なんてありはしない。ハンドルを握る手の力みが増して、やっぱり来なきゃよかったと後悔し出したところへループ橋が現れた。もう行くしかない。赤いスポーツカーが私を抜きたそうにしているのがバックミラーに見えるが、構うものか、ど真ん中を走ってやれと腹を決めた。ループ橋そんなに急いでどうするの、である。

ループ橋を渡り終えて川沿いに今井浜海岸へ向かう。対岸の桜の下には多くの屋台が出て人混みがずっと続いている。線路下近くのコンビニでサンドイッチと飲み物を買い、コンビニ裏の土手でサンドイッチを頬張りながら対岸の賑わいを眺める。もうその時点で人混みの中を歩く気持ちは萎えていた。せっかく河津まで行ったのに桜の景色を遠くから眺めただけで帰ってきた。

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帰りはループ橋を避けて東海岸の135号線を走り、亀石峠から田京に出た。2時間バイクに乗りっぱなしで尻が痛くなったが、気持ちは帰りの方がはるかに安らいでいた。(あ)

あやめ湯(18:10〜19:03)7→2人。

タイムラプス(17:03〜17:56)

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4,153歩。