いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

初めての砂絵に満つる淑気かな

砂で「ゴルゴ13」を描いてみた。これを描くのに30分ほどかかった。目の部分を描くのに費やした時間がそのうちの約半分。毛筆や爪楊枝まで動員して描いてみたが、砂絵は目も含めた細かな顔の表情を描くには不向きだと感じた。エドヴァルド・ムンク「叫び」とかフィンセント・ファン・ゴッホの「糸杉」とかのような妖しげに揺れる曲線を描くのには向いているように思う。
さて、これだけの絵に30分もかかるとなると、これをアニメーション化するのにどれだけの時間を費やすことになるのか。それを思うと頭がくらくらしてくる。ロシアのアニメーション作家アレクサンドル・ペトロフの「老人と海」(23分)には2万9000枚もの絵を使っているという。単純計算すれば、1分のアニメーションを作るのに約1,260枚の絵を描いたことになる。一枚の絵を描くのに30分かかったとしたら、37,800分=630時間、毎日4時間描画に没頭するとして158日。なんと1分のアニメーションに半年近くもかかってしまう。
ペドロフの「老人と海」の詳細な描画は、とても30分で描いたとは思えない。一日一枚描き上げるのがせいぜいだったのではないだろうか。いや、もっともっと時間がかかっているはず。ガラス板に直接描いたそうだけれど、その一枚一枚が芸術品としての価値を持っていると思う。素晴らしい絵だ。ゴッホが「ひまわり」を描くのにどれほどの時間を要したか知らないが、あのジャパンマネー躍る1987年に、ある日本の生命保険会社が53億円でこれを落札している。ネーム・バリューの違い、あるいは歴史の重みの違いといえばそれまでだが、ペドロフの「老人と海」だって決して引けは取らないと思っている。
アニメーションに使う一枚の原画にだって十分な芸術的価値はあると思うのだが、それが美術の世界で格段に蔑まれるのは、ひとえに大量の枚数のうちの一枚に過ぎないという先入見が見る人にあるからではないか。たとえどんなに一枚一枚丁寧に描いたとしても、全体の、例えば2万9000枚という圧倒的数量に価値が薄められてしまうということなのだろう。同じ血の滲むような思いをして描いた絵が、かたや53億円、かたや値もつかないというほどの差が生じるのは、どうもバランスを欠くような気がしてならない。
とまれ、私が描こうとするアニメーションは砂絵のコマ撮りで進めるつもりだ。それで砂絵の特徴を生かした絵作りを模索しながら、マイペースでのんびり楽しみながらやっていきたいと思う。まとまった作品が出来上がるのはいつになるか全く見当つかないが、アトリエ(?)もできたことだし、砂絵アニメーション作りを生きがいの一つに据えてこれから頑張っていくべし。(あ)

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8,045歩。