いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

片羽の蝉這いつくばって生きる意地

真夜中から朝4時にかけて、孫娘に何度となく揺り起こされる。昨日の晩に、明日の朝お日様が出る前にカブト、クワガタを捕りに行こうか、起きられるかなと言って蚊帳にもぐり込んだら、孫たちはすっかりその気になってしまった。

ぐっすり寝入っていると、じいじ朝だよ、と最初の揺らしが襲ってきた。孫娘である。時計を見るとまだ0時にもなっていない。虫愛づる姫君は夜明けが待ち遠しくてしかたがないらしい。それにしても0時前じゃ夜明けどころかまだ明日にもなってないじゃないか。

お兄ちゃんはすやすや寝ている。カミサンは寝られないと察して最初から二階へ避難済み。まだお外は真っ暗だよ、時間がきたら起こしてやるからそれまで寝てなさい、と言って寝かす。そして1時間後、二度目の揺らしがきた。まだ朝じゃないよ寝てなさいと言うと、だって寝られないんだもんと孫娘。寝られなくても寝なきゃカブト捕りに行けないよと強引に寝かす。

開け放した窓から新聞配達のバイクの音が聞こえ、同時に孫娘の起き出す気配を感じて目を覚ます。時計は4時を少し回ったところ。よし行くかと、蚊帳を跳ね上げ外に出る。かわたれ時を過ぎ、空気はひんやり気持ちいいのだけれど、さすがに寝不足気味で目がしょぼついている。お兄ちゃんを起こしてきてと頼まれた孫娘は、家に走り戻って早速お兄ちゃんを連れてきた。朝の弱いお兄ちゃんとしては珍しい。ランニングシャツでは寒いとTシャツを上に着込み、手に昨夜仕込んだカブトムシの飼育ケースを提げて出てきた。ケースの中にはふかふかの土とエサの蜜と、なぜか大谷石の欠片が入っていた。

カブトムシやクワガタがクヌギやコナラの樹液を好むことは孫たちは知っていた。朝方多く見つかることも知っていた。テレビから得た知識だろうか。ただ実際に捕まえたことがない。

それは私も同じだった。私も捕まえようと思って捕まえた経験がない。中学生のときにおが屑の山に大量のカブトムシが発生したことがあり、そこで何匹も捕まえた記憶はあるが、山の中までわざわざ捕りに行ったことはなかった。

ただ、伊豆の家の周りにはクヌギの木もあることはあり、そこにカブトやクワガタがいても不思議ではないと思っていた。私としては、たぶん見つからないだろうな、でも見つかるといいなくらいの気持ちで誘ったのだが、孫たちは絶対見つかると信じて疑わない構えだった。

昨日のうちに当たりをつけていた数カ所を回ってクヌギの幹に目を凝らしたが、果たしてカブトもクワガタもいなかった。早くしないと朝になっちゃうよと言うお兄ちゃんの言葉に、確信もないまま孫をカブトムシ捕りに誘い出したことに少し心が痛んだ。

3,228歩。

写真は、家のそばの路上で蝉のスケッチをする孫。家での遊びに飽いた孫娘が、どういう風の吹き回しかスケッチしに行こうと私を誘い出した。和室でバスケットをしていたお兄ちゃんも、僕もと後に続く。お兄ちゃんはチームの監督をしているママの影響かどうか、このところサッカーよりもミニバスケに執心らしい。

家の前の道を山に向かって歩き出したら、蝉が道の真ん中で死んでいた。摘まみ上げようと手を近づけたら羽をばたつかせて仰向けにひっくり返った。蝉は死んでいなかった。見ると右の羽が取れている。飛べなくなって道に落ちたらしい。じゃあこの蝉をスケッチしようかと言ったら、孫たちは地べたにコピー紙の束を置いて蝉を描き出した。片羽をどう描くか注目していたら、二人とも大きな羽を左右対称に描いていた。ない羽を想像し勝手に描き加えている。想像力も大事だけれど、あるがままを見つめる目も大事だということをそろそろ学んでもいい頃かな。(あ)

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