いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

石畳猫仰向いて夕涼み

あやめ湯(17:50)3→1人。私がこんばんはと風呂場に入るとマイ桶氏ともう一人の二人がいた。二人ともこんばんはと返す。マイ桶氏とは一週間ぶりだろうか。湯舟の湯を体に掛けながら、この時間はこんにちはなのかこんばんはなのか迷いますねと言うと、そうだねとマイ桶氏。しかし、その後が続かない。そのうち一人の人が出て、風呂場は私とマイ桶氏の二人だけになった。体を洗いながら何か話そうと思うが言葉が出てこない。湯舟に浸かりながらだと顔を合わせながら、今日は暑かったですねえとか何とか世間話の口火も切れるのだろうが、体を洗いながらだと相手に背を向ける格好になるので声をかけづらい。頭を洗い終わったところでマイ桶氏を振り向くと、それを待っていたかのように立ち上がり、では私はこれで、後は貸切をお楽しみくださいと微笑んで出て行った。今日はマイ桶氏とひと言ふた言くらいしか話を交わせなかったけれど、その微笑みに、どことなく私のことを気に留めてくれているふうな雰囲気が感じられ、それが私にはとても嬉しかった。

マイ桶氏が出て行った後は、スピーカーから流れる演歌を聴きながら、一人貸切を楽しんだ。風呂場の窓は全て開け放たれ、吹き込む夕風が爽やかで心地よい。簾を透かして見る窓の外は石畳の路地で、向かいの寿司屋の飼い猫だろうか、路地の真ん中で無防備に仰向けになり、白い腹をこちらに向けているのが見える。何とものどかで、時間がゆったり過ぎてゆくのを感じる。

マイ桶氏の話によると、あやめ湯はできて100年以上は経つという。脱衣所の大鏡に記された電話番号から推して、たぶんそうだろうとは思う。しかし、ここの温泉は残念ながら純粋な源泉掛け流しではない。いつの年かのリニューアルで循環温泉システムになったらしい。だから湯口から勢いよく流れ出る湯は、厳密には浴槽から吸引された循環湯である。随時殺菌剤の注入もある由。ただ、浴槽の下部に別の小さな湯口があって、ここから熱めの源泉が投入されており、浴槽からは常に湯が溢れ流れている。実際そこに足を持っていくと熱いと感じる。100%の源泉だと多少濁ったりもするが、あやめ湯は無色透明無味無臭で衛生的。たぶんリニューアルのときに地元愛好者の希望もあって純粋な源泉掛け流しよりも衛生的な方を選んだのかもしれない。それでも間違いなく温泉気分は楽しめるので、私としては十分満足しています。

6,369歩。

写真は、あやめ湯裏の路地。右手の簾がかかっているところがあやめ湯。カランコロンと下駄を鳴らして歩きたくなります。(あ)

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