いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

ひと夏の命をつむぐ死出の宿

午後3時過ぎ、雨上がりを待って静浦漁港にバイクを走らせる。シロギスの釣れ具合を見に行ったのだが、堤防からシロギスを狙っている人は一人もいなかった。堤防では20人ほどが竿を出していたが、そのほとんどが遠投カゴ釣り。突端でクロダイ狙いの人が一人いた程度である。いつぞや立ち読みした釣りガイドには、堤防の内側でシロギスが釣れるようなことが書かれてあったが、実際は釣れないのかもしれない。釣れるとしても、稀に釣れることがあるくらいではないかと見たがどうだろう。本には、一度でも釣れたことがあれば釣れたと書くだろうから、あまり当てにはならない。シロギスを狙うなら、東伊豆の網代、宇佐美方面が適当かもしれない。地元の釣り餌店で訊くのが手っ取り早いが、堤防の様子を見る限り、これは訊くまでもないと判断した。シロギスはダメだ。やるならクロダイだな。

f:id:jijiro:20150530054223j:plain

クロダイは、静浦漁港よりももっと伊豆長岡寄りの江ノ浦がいいらしい。沼津マリーナの近くである。係留された船の間を団子釣りで狙う(団子釣りとは、針掛けのオキアミを米糠などを練って作った団子で覆い、それを海に放り投げて釣る方法。紀州釣りともいう)。しかし、これまで何度か下見に出かけているが、どうも常連の釣り座というのがあるようで、今ひとつ気が乗らない。常連はよく釣れるポイントだから決まってそこに竿を出すわけで、そこへよそ者がのこのこ割り込んだ日には何を言われるか知れたものではない。無用な争いは避けたいという気持ちが先に立ってしまうのだ。そこまでして釣りはしたくない。だったら乗合船で高級魚を狙った方がよほどいい。

1,123歩。

写真は、沼津市志下の坂部酒店。静浦漁港からバイクで数分のところにある。せっかくだから帰りにちょっと寄ってみようと思ったのだか、こんなに近いとは思わなかった。ここは昭和7年、太宰治が内縁の妻小山初代とともにひと夏世話になった家。当時、太宰がもっとも親しくしていた坂部武郎の実家である。実際の寝泊まりには蔵の裏にある田中さんという家の二階を使っていたとのこと。この年太宰23歳、初代20歳。ここで太宰は『思ひ出』を書いた。

f:id:jijiro:20150530054103j:plain

ついでにもう一枚。こちらは太宰が『斜陽』を執筆した安田屋旅館。沼津・三津シーパラダイスの近くにある。(あ)

f:id:jijiro:20150530054033j:plain