いずぃなり

伊豆でのシニアライフ

筏場のわさび田

中伊豆の貴僧坊水神社で汲んできた湧き水がなくなりかけてきたので、今日、汲みに出かけた。前回行ったときから数えて約1ヵ月ぶりになろうか。15リットルの水が1ヵ月でなくなるということは、1日500cc飲んだことになる。コーヒーを淹れるとき、焼酎やウイスキーを水で割るとき、煮物をするとき、薬を飲むとき、そして喉が渇いたときは、いつもこの水のお世話になるから、ならすと1日の使用量はそれくらいになるだろう。湧き水は今や生活の必需品になっている。
前回は、水タンクに柄杓で汲んだ水を注ぐのに難儀したから、今回は100円ショップで買った大きめのジョウロを用意した。そのおかげで、ものの数分で水タンクは満杯となる。15リットルの水は結構重い。途中バランスを崩して、隣のわさび田に流れ込んでいる流れに落っこちそうになった。昔の若い娘さんたちは、これを天秤棒で担いで沢の上り下りを繰り返したのかと思うと、その苦労が偲ばれたことだった。
水タンクをバイクに載せ、急ぐ都合もなかったし、せっかくここまで来たからには筏場(いかだば)を見ておこうと思った。筏場は井上靖『しろばんば』に出てくる「馬とばし」(草競馬)が行われた場所として記憶にある。天城の山奥にそんな広い草原があるのか、ならば一度見てみようという気になった。
貴僧坊水神社の前の道に出る。この道は国道59号線で、伊東と湯ケ島を結んでいる。国道とも思えないような山里の道を湯ケ島へ向かってバイクで5分ほど走ると、そこがもう筏場だった。しかし、あると予想していた草原らしきものが、どこにも見当たらない。山に囲まれた谷間に20軒ほどの民家が集落を作っているだけだった。その山里のはずれから道は鬱蒼とした針葉樹林に入る。林道のようだが、ここも国道59号線。薄暗い中をしばらく走ると、秋の陽がまぶしく照らす場所に出た。そこにはわさびの棚田が広がっていた。見るだけで目にツンと刺激が走るようなわさびの葉が青々と埋め尽くしている。ここは秘めた観光スポットらしく、私の他にも年配のカップルがシャッターを切っていた。
わさび田を後にし、さらに林の中を走ると国士峠と書かれた杭が見えた。峠といっても見晴らしがいいわけでもない。ただそこを境に上りが下りになるだけ。ひたすら下ると、道は湯ケ島小学校の脇へ出た。『しろばんば』では、洪作少年が仲間と馬とばしを見に行くのに、国士峠を越えて筏場まで半分駆けるように進んで行く場面があるが、今日実際に通ってみて、小学生が歩くには相当な距離であること(しかも往復)を、驚きとともに実感した次第。昔の子どもは本当にたくましかったんだなあ。1,649歩。
写真は、筏場のわさび田。案内板には「日本一の品質」と、誇らしげに書かれていた。わさび田の秋日に照れる誇らしさ(あ)

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